婚約者と妹が運命的な恋をしたそうなので、お望み通り2人で過ごせるように別れることにしました
柚木ゆず
プロローグ
「ヴィクトリア。君との婚約を白紙にしたい」
5月16日――私達の結婚式まで、ちょうど1か月となった日の午前中。その相手であるルーエン伯爵家の嫡男・オスカーが、私の自室にやって来るなりそんなことを言い出した。
…………は? この婚約を、白紙にしたい?
「ヴィクトリアと出会って、およそ1年と4か月。プロポーズをしてから、およそ7か月。君との生活はとても楽しかったし、今でも楽しいと思っている。ヴィクトリア・ノエマインは、100点満点の女の子だ」
「……………………」
「でもね、120点の女の子に出会ってしまったんだよ。おいで、運命の君」
唖然となっていると、オスカーは廊下へと向けてパチリとウィンクをする。そうしたら、ウルウルのタレ目が印象的な少女――
「紹介するよ。彼女がその人、真なる運命の人。撤回後に婚約を結ぶ相手なんだ」
「おねぇちゃん。実はオスカーさんの運命の人だった、ノエマイン伯爵家の次女・メリッサです……っ」
引き続き唖然となっていると、メリッサはモジモジしたあとペコリ。小さく頭を下げたあとフリフリのワンピースの下部を掴んで、おすまし顔でちょこんとカーテ・シーを行った。
「実を言うと、ね。ヴィクトリアと出会った直後から――この家に挨拶に来た時から、不思議な違和感を覚えていたんだよ」
「……不思議な、違和感……?」
「メリッサを始めて見た時、胸がトクンとしたんだ。……最初はその意味が、分からなかった。けれど何度も会って言葉を交わすうちに――君に会うべくココを訪れるうちに、その正体に気が付いた。これは、恋。真の恋だったんだよ」
初めての来訪時に初めてメリッサを目にして、僕の心という土壌に恋の種がぽとりと落ちた。やがてそれが『接触』という名の水によってすくすくと成長し、ついにヴィクトリアという花を超えてしまったんだ。
彼は自分の胸元に両手を添えながら、それはもう熱く力説した。
「そして、なんと……っ。この想いは、一方通行ではなかった。ね、メリッサ」
「ん……っ。おねぇちゃん、実はあたしもそ~だったの。だんだんと『この人いーな』って思うようになって、会うたびにその気持ちがおっきくなっていったの。でねでねっ」
「「昨日やっと自分の気持ちに気付いて、告白をしたんだ(したの)。やっとやっと、両想いって気付いたんだよ!(気付いたの~っ!)」」
2人は恋人繋ぎをして、まったく同じタイミングでニッコリ。しかもそのあと、メリッサとオスカーはキス。目の前でしっかりと愛を確かめ合い、私の部屋でイチャイチャし始めたのでした。
……………………。なにこれ。
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