第4話 ぼくって凄い?
あの後、アリスは色々と話してくれた。
まぁ一方的に話してたんだけどね。
アリスは最近冒険者を始めたそうで、もう一人女の人とパーティを組んでいるとの事。
『多分この前見たあの人だな』
ギルドというものがあって、今はまだ一番下のEランク。
パーティを組んでいる女性はもう少し上だそうだが常にパーティを組んでいるというわけではないとの事。
ギルドランクには一番上がSランクでA.B.C.D.Eとありそれに見合ったクエストや報酬が用意されている。
アリスが冒険者になろうとしたきっかけは、つい最近出来るようになった召喚魔法だったそうだ。
彼女はとても貧しかったそうだが、その女性が援助をしてくれる様になり生活は少し楽になった様子。
それまではその日を生きる事がやっとという感じで、食べ物も無い着る服もない、そんな時にその女性は手を差し伸べてくれたそうだ。
しかし劇的に変わったかと言われたらそうではない。
それでも、道端で寝ていた私が今は雨風を凌げて屋根がありフカフカの藁がある所で休ませてもらっている。
そのおかげで寒さも
それに服ももちろんボロボロだけれどそれなりの物を着ている。
食事に至っては相当変わったそうだ。
そして、最近見つけたこのため池、これのおかげで水浴びが出来るようになったのだとか。
「冷たいのが難点だけどね」
でも、寒さで震えているアリスを見て悲しくなった。
しばらくして水浴びを終え、帰ろうとした時だった。
「ひっひっひ、兄貴こんなところに女がいますぜ」
「しかも……良い体してんじゃねぇ〜か!」
「おい、女こんな所に一人でいたら俺らみたいな奴に襲われちまうぜ」
茂みの中から現れたのは三人の男でどう見たって盗賊だった。
「何? あんた達!?」
アリスは
それもそのはずだ、水浴びをしている最中であった為、服など着ていない。
「あんれ〜、お探し物はこれかなぁ〜!?」
盗賊の一人がアリスの服を持ってニヤけている。
「くっ!」
「でも、兄貴。この服ボロボロですぜ」
「女には変わりねぇだろ! 体さえ良かったらそれで良いんだよ」
「ちげぇーねー、ひっひっひ」
『ヤベー、これはヤベーな! 今のアリスにはあいつらを相手にする力はねぇ〜』
「またこの生活に逆戻りなのかな……」
ボソリと聞こえたアリスの言葉。
『君は今までどんな生活をしてきたんだ……』
アリスは自分の体を隠すこともなく盗賊の方へと歩いていく。
その目はもう上の空で、正気を感じられなかった。
「良い子だ! 存分に可愛がってやるからな」
「兄貴俺にも残しといてくださいよ!」
「俺にもっす」
「わーったわーった」
盗賊もアリスに近づき、あと数メートルの所まで来た時。
「やめろぉー、アリスに触るんじゃねぇー」
ぼくは我慢の限界を迎え叫んでいた。
その瞬間体の中から力が溢れてきて、アリスの腕に乗る程だった子熊が2メートルを遥かに超える熊の魔獣へと変化したのだ、と!!
『その時自分では分からなかったけど後にアリスから聞いた話によるとそうだったみたい』
「もう一度言う、アリスに触るんじゃない!」
ぼくは軽く咆哮をする。
「何だこいつは、あのちっこいクマが何でこんな奴に!」
「こいつは……ブラッディベアー!!」
「おい、兄貴なんだよその…ブラッ……」
「ブラッディベアーはな、Aランクの魔獣だ」
「何でそんな奴がここに」
「知るかよそんな事」
『ぼく、今そんな化け物になってるんだね!! 異世界って凄いね、うん! まぁ相手は盗賊だし良いよね』
ぼくは奴らに向かって突進をする。
普通に走ったと思ったのだが一瞬で盗賊達との距離が詰まり、焦って思わず振った手が盗賊に当たり、真っ二つに引き裂いたのだ。
『え、マジで!』
「ひっひぃーーーー」
「待ってくれ兄貴ー!」
『あっ! 逃げた! どうしようかな〜。なんか、人間じゃなくなってからああいう奴らに対して何の同情も感じないんだよね。それよりアリスに対してした事がどうしても許せないし、まぁ良いか!』
再度咆哮『うん? 何か口から出そうな……。あ! 汚いものじゃないよ!』
何かが出る気配がし口を開くと一直線に何か飛んでいった……。
『……これあかんやつやな!』
物の見事に目の前の光景が一変していた。
『あ〜、やっちゃった』
本来、目の前には山が連なっていたのだが……。
見事にトンネルになっていた。
盗賊はというと……。一応生きてるね、立ちながら失神してるけどね。
ぼくは、アリスの方を見る。
『ですよねぇ〜』
案の定、呆然と立ち、驚愕と恐怖で震えていた。
『そういう反応になるよね、いきなり大きくなったと思ったら超パワーだもんね』
「……アグー!? あなた本当にあのアグーなの?」
ぼくはアリスを見て『うん』と頷く。
まだ怖いのだろう、足取りは遅いがゆっくりと近づいてくる。
そして、ぼくに触れた。
「アグー」
よっぽど怖かったのか震えながら抱きつき泣いている。
ぼくはそんな彼女を優しく包むように抱きしめ返した。
『クマだけどね』
「暖かい、ありがとうアグー」
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