転生鍛治師の最強再起法〜才能<武器だったんだが〜

ない

第一章 鍛治師転生編

プロローグ ありがちな転生劇

 

 ーー俺の名前は佐山優斗、十七歳だ。


 一応自己紹介はしておこうと思う。


 俺は今、地べたに横たわりながら血を流し、とてつもない痛みを感じている。


 いきなりこんな形の挨拶ですまないね。

 って、さっきから誰に話しかけてんだ俺は。


 こんな経験なんて今までしたことがない。


 学校からの帰り道、イヤホンから流れる音楽を聴いているとそれは起きた。


 突如として体に異変が起き、気が付いたら吹っ飛ばされていたのだ。

 信号を渡っている途中でトラックか何かが突っ込んできたんだと思う。


 こんなに低い確率に普通当たるか?


 自分がそうなるなんて微塵もおもっていなかったな。


 ああ、痛い痛いいたすぎる。

 いたすぎていたいいたいわ。


 突然の衝撃を受けて身体中が悲鳴を上げているかのようだ。


 もう身体の原形は留めておらず、かろうじて頭の中だけが動かせる状態だ。

 おそらく見るも無惨な姿に成り下がっていることだろう。


 俺、何にも悪いことなんてした覚えはないのに。


 ……ああいや、昨日あいつと言い合いになったな。


 死ねだの消えろだの色々感情的になって言い過ぎたっけ。


 全面的に悪いのは俺だということはわかっていたのに。


 はっ、神様はちゃんと見てるってことか。


 でもこれはちょっと度が過ぎるだろ。

 こんな古典的な天罰が下るなんて……。


 時間の流れが遅くなっている気がするのは必死に脳を働かせているからだろうか。


 こうして何かを考えてられるのは、きっと走馬灯のように記憶が流れているせいかもしれない。


 ーー本当にこのまま死んでしまうのか?


 まだやりたいことがたくさん残っているのに、17歳で死ぬなんて悲しすぎだろ。


 まだ彼女だって作れてないし、夢の薔薇色学園生活は実現できていない。


 ごめん、母さん、親父。

 別れの言葉も言えそうにないよ。


 友よ、すまないもうネトゲの攻略はしてあげられそうにない。


 春菜、すまん。

 俺みたいなやつと兄妹で嫌だっただろう。


 俺はこれまでの人生を振り返るように思い出した。


 やがて、目の前の光が少しずつ消えはじめた。

 恐らく俺の魂はここで潰える。


 あれ、天国とか地獄とかあるのか?

 転生する先とか決めたりできないのだろうか。


 まあ、それはアニメとかの見過ぎかな。


 ああ、こんな事を考える気力も無くなってきた。

 さようなら、俺の短い人生。


 ーーできることなら、次は人のために生きられるような、そんな人間に生まれ変わってみたいよ。






 ……あれ、意識がまだあるな。


 目は何故か見えない。

 ここは、何処だ?

 助かったのだろうか。


 身体は……ある。

 痛みは感じない。

 けど、思うように動かせない。

 

 それと、誰かの声が聞こえる。


「お前の名前は、エバン!! エバン・ベイカーだ!!! 俺の息子にふさわしい名前だろうミア!!」


「ふふ、そうね。あなたは私たちの息子、エバンよ。

生まれてきてくれてありがとう、エバン」



 ……誰が、誰だって?


 俺はアニメや小説のような、とてもありがちな死に方をした。


 そして、気づいた時には異世界に転生していた。


 ーーああ、とてもありがちだった。

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