ゆめかうつつか

帯締めを締める音は何かに似ている

そう思いながら外に出ると 

もう雨は止んでいた


若いときに着そびれた着物をまとって

自分がうつくしくないことを思い知る

濡れ色の小路 両側の竹垣は朽ちて

ほどけたしゅろ縄から雫が落ちる


どこからか 途切れ途切れに三味の音


 あい みて

 か くまう

 いき とし

 いくと せ

 と ぎれて

 きえ さる

 れつれ つ

 たま しい


その時ふいに風 

笹の葉が鳴り

三味の音が消え 

竹垣の隙間から飛び出してきた

ところどころ毛の抜けた狸が

片方の足を引きずりながら 

目の前を横切る




椿が落ちた




行きたいところはどこだったのか

会いたい人はだれだったのか

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