#17
#17
「二人だけになっちゃったね...」
「そう..だね」
お互い少し気まずそうに話す。
「かっ...帰ろっか」
「うん..帰ろ」
帰ると言っても雪奈はバス、僕は電車だからそんなに長い距離ではない。
「ちょっとだけ..遠回りしない?」
雪奈がそう言ったのは校門を出て少しした後だった
「やっぱり、嫌かな?」
反応に困っているとまた雪奈が口を開いた
「結花に申し訳ないかなって...」
その時和希はポケットに振動を感じて、手を入れてスマホを取り出してみると結花からのLINEがきていた
"たまには雪奈と二人で帰ってあげてね"
どこかで僕達を見ているのではないかと疑ってしまうほど、タイミングの良いメッセージだった
「じゃあ一緒に遠回りしてくれる?」
和希のスマホの画面を覗き込みながら首を傾げた
「良いよ、行こっか」
並んで歩き始める二人はまるで付き合っているみたいにみえたかもしれない。
「この前は色々とごめんね」
少ししてから雪奈は口を開いた
「気にしなくて良いよ」
「でも私、まだ和希のこと好きだよ」
体の温度が急に上がった気がした
「バンドメンバー兼友達としてね」
雪奈は悪戯っ子な子供みたいに笑う。
「僕も好きだよ」
「えっ?!」
和希の少し先を歩いていた雪奈が振り返って和希を見つめた
「バンドメンバー兼友達としてな」
雪奈がやったように和希も真似をして笑った
「も〜!」
頬を膨らませている。
「ここまでだね」
遠回りをしたのに時間はあっという間に過ぎて、バス停まできてしまった
「じゃあばいばい」
「また明日」
二人は手を振り合って別れた。
音楽を聴こうとスマホを取り出すと結花からLINEがきていた
"雪奈、泣いてなかった?"
きっと結花も気にしているのだろう。でもその不安とは裏腹に雪奈は元気そうだった
"元気そうだったよ"
そう送ってからイヤホンをつけて音楽を再生した
思い返せば最近は結花や他のバンドメンバーと一緒に帰ることが多くて、こうして一人で音楽を聴きながら歩くのは久しぶりだった。
家に到着して自分の部屋に背負っていたリュックをてきとうに置いて夕飯を食べにリビングに戻ろうとした時、スマホが鳴った
画面を見たらバイト先のマネージャーからの着信だった
"和希君、急にごめんね。明日なんだけどシフト入ってもらえないかな?"
"わかりました、19時からで良いですか?"
"うん、ありがとう。明日の20時から新しいバイトの子が来るから色々と教えてあげて"
そう言い残して電話が切れた。
リビングで夕飯を食べてお風呂に入ってから眠りについた。
次の日
いつも通りに結花と学校向かって最寄駅からは別々に歩く。学校ではただのクラスメイトで同じバンドのメンバーという関係。部活中でもそれは同じだ。
何事もなく学校と部活を終えた。
「今日バイトだから、また明日」
バンドメンバーに手を振って歩き出す。
「私も予定あるから」
結花もそう言ってから歩き出した。
結花と並んで歩く。僕はそのままバイト先に向かう。とはいってもバイト先は家の最寄り駅の近くなので普段と特別違うところはない
結花は予定の前に一旦家に帰るとのことだ。どんな予定なのか訊いても
「内緒」
と、教えてくれなかった。
「へ〜、和希ここでバイトしてるんだ」
そこは駅前のカフェだった
「うん。そろそろ時間だから行くね」
僕は店の中に結花は家へと歩いた。
一時間後
そろそろ新しく入った子が来る時間だと思っていると、店の自動ドアが開いた
少し慌てた様子でいる女の子は恐らく新しいバイトの子だろう。でもそんなことどうでも良い程に和希は驚いていた
「結花!?」
僕の声に気がついた結花が、へへっと少し下を出して笑った。
更衣室で着替えた結花が出てきて大きな声で
「今日から新しく入ったアルバイトの雨宮結花です、よろしくお願いします」
と言って軽くお辞儀をした。頭を上げるとすぐに僕のところに来て
「久里浜先輩!よろしくお願いします!」
きっと周りの人は結花のことを真面目な新人とでも思っているのだろうが、そんなことはない。
実際に今僕の前にいる女の子は子供みたいに笑いそうなのを必死に堪えてこちらを見つめている
「よろしくね、えーっと..雨宮さん」
危うくいつも通りに呼んでしまいそうになったが寸前で止めて名字にさんをつけて呼んだ。いきなり呼び捨てになんてしたら、付き合っている事はバレないにしても呼び捨てに出来るほどの関係なとだとバレてしまう。
色々と訊きたいところだが、仕事中のため一旦後回しにして結花に仕事のやり方や機械の操作の仕方を一通り教えた
「わかんない事あったらいつでも訊いてね」
そんなこんなで結花の初めてのアルバイトが終わった。
「今日21時までだよね、あがって良いよ。お疲れ様」
「ありがとうございました、お疲れ様です」
結花はまたみんなにお辞儀をしてから帰って行った
和希は22時まで働いてからあがった。
「お疲れ様!」
バイトの服から制服に着替えて店を出るとそこには結花がいた
「もしかして、ずっと待ってたの?」
「そうだよ、だって一緒に帰りたいもん...!」
結花は少し赤くなった頬を隠すように俯いた。
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