空白地帯:魔界飯God's and Death!

その雑居ビル群はほとんどが渡り廊下で繋がっていて

ひとつの建物・・・まるでここだけ時間軸が違う世界。


外側の古びた感覚とは違い、中はさながら温もりのある

ショッピングモールの様な場所で・・・

現代の大人達が子供の頃に見た様な小さなオモチャ屋とか

いろんな心躍るあの感じがまるでその当時のままを保存している様に

パッケージされていた。


結も子供の頃から男の子っぽい事しかやってなかったので

懐かしさで胸が一杯になる。


「結ちゃん、あまり魅入られるなよ?出られなくなるぞ」


そこには人間と同じ形をしているが芥子河原の様な悪魔の様に

ちょっとだけ価値観がズレている悪魔のお仲間さんたち・・・


人間である結を見かけても全く警戒をしない。

ここは入口さえ通れたのであれば誰でも入れるのだ。


今日の目的はこの「地蜂巣ビーハイヴ」の管理人との顔合わせ。


「なんか、悪魔のマナーみたいなのはあるんですか?」


「結ちゃんはいつも通りで良いぞ」


とは言っても、重要な話をするでもなく、悪魔探偵としてやってる仕事とか

二人は何が出来るのか・・・軽いノリの面接の様なモノだった。

真空管テレビに4畳半の夕焼けっぽい照明の部屋にちゃぶ台が一つ・・・

小気味の良い昭和歌謡もラジオから聞こえてくる。



途中から芥子河原と管理人が大好きな技術畑の話が繰り広げられて

結は蚊帳の外・・・そんなこんなで顔合わせが終わる。


「まぁ、何かあったら世話するよ。何でも言ってくれ」


初老の叔父様っぽい作業着姿の悪魔の男性との話が終わる。


「ごめんね結ちゃん。退屈だったでしょ?」


「いや、スマートに話を進めてくれるから

 なんか、カッコいいなって思いました。」


言われ慣れてないフレーズに戸惑う悟・・・


「うぅ、緊張解れたらお腹減ったかも。」


「悪魔の飯屋でよければ、ガッツリ食えるんだが・・・食いたい?」


「えー!?メッチャ興味あります!」


さすが黄泉還りした人は違うな。建物の中にある適当な飲食店を見つけて

小奇麗な店内にカランカランと鈴の音を鳴らして入店。

メニューに目を通す。コーヒーとか美味しそうなソースの匂いがしてくる場所だが

「魔界大蛇の串焼き(塩かタレ)」「鬼龍産ハーブサラダ」

「ドラゴンカレー激辛」「魔獣猪ステーキ」など癖の強いメニューが出て居る。



とりあえず、魔界飯を勝手知ったる悟がオーダーする事に。

「ウロボロス串揚げ」「地獄のエビフライ」「オーガアリゲーターの蒲焼き」

ライスが無料で追加できるが、果たして人間のお口に合うものか・・・


オーガアリゲーターの蒲焼きをサクサクっと

中から血の色の様な肉汁がジュワーっと出てくるが・・・

「え・・・これ凄い美味しい!」ご飯と共にどんどん食い進んでいく。

芥子河原がコーヒー啜ってる間にタガが外れた様にバクバク食べてしまわれた・・・


魔界飯は魔力に変換されるからHPとMPみたいなモンを回復できるのだ。

現代人は逞しすぎないか?否、この子が多分ぶっ飛んでるのだ・・・

「今日はこの後お仕事無いんですから、お酒とか無いんですか?」


「う?うん。あるんだけど・・・」


人間と言うよりは魔人アスモディアン寄りになってる彼女は

毒林檎酒を飲んでも平気だったんで、おそらく既に普通の人間じゃないぜ!

ここでは物価が安いから一杯食べられるけど悪魔探偵に魔界飯食わせまくってたら

本当に悪魔になっちまうぜー!




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