第21話

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「そんなことを問いかけられて私が何と答えるとでも?それも君は明晰な頭脳で既に先回りして回答を得てるのかね?」

 少し自嘲気味に笑う老人に僕は手を振る。

「いやいやとんでもないです。それに僕には明晰な頭脳なんてない。僕の遠い親類には明治、大正、昭和の頃に活躍した探偵の助手をしていた人物がいますが、僕に到底そんな人物の頭脳のこれっぽっちもありません」

 僕は親指と人差し指を丸めて隙間を作って老人に見せた。勿論指が吸い付くぐらいに限り合る隙間を。

 それを見た老人がからからと笑う。

「どうも君は不思議と人を和ませる才能があるようだ。まぁ劇団員として働いているようだが、将来大成するかもしれんな。まぁもしかしたらその遠い親類さんの様にそちらの方でも成功するかもしれんが」

 言うや老人は帽子を被りなおして、僕を振り向いた。

「伝播するだろう。遺伝性はな。特に人間の繁栄に関わるような生殖を司るだろう性癖などと言うものはな」

 僕は老人があまりにもまじまじと言うのを拍子抜ける様に聞いていた。正直、もし老人が答えるとしたら、

 それは、否

 と、答えると思ったからだ。

 何故、そう思ったのか。

 それはそう答えることで自分を核心から外して遠くへ行かそうとしなければ、自分自身が危うくなるからだ。その為にはシンプルにそう答えるのがベストなのだ。

 僕は頭を掻く。

 掻きながら老人へ問いかける。

「成程、それでは、あなたはこの事件にすべてに関わるある血縁的配列について『ある』と言えるということですか」

「そうだな」

「ある血縁と僕は言いましたが、あなたはそれを理解してるようですね」

 老人の顔がやや上がる。それは少しミスをしたことを隠そうとしている仕草に見えた。

 つまり僕の誘導尋問に対してひっかかった自分の心の動揺を隠す仕草という事だ。

「そうならどうといえる?それが君の言う血縁的関係とマッチするとはいえるのか?どうかね」

「じゃぁ言いましょうか?」

 僕が挑戦的な視線を送る。

「まぁ事件のそれぞれを話す前に、事件それぞれに関わる全ての人々の関係を話したほうがいいでしょう」

 僕はぴしゃりと首筋を叩いた。

「まず、時代の中心にいた三人として東珠子、火野龍平、田中竜二、これらは同じ年に生まれた三人。この三人はこの集落で育った、そうですね?」

 老人は頷いた。

「そうだ」

 僕は頷いた。

「そう、僕は言いました集落で育ったと、そして生まれ育ったとは言っていませんので、あしからず」

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