第47話 街へお出掛け(1)

 真昼の王都を若い男女三人が並んで歩く。

 最初に着いたのは、王城前広場。ここは軍の建物から程近く、街路樹やベンチが多く設置されている市民憩いの場だ。

 昼時ということで広場には屋台が立ち並び、食事を求める人で大賑わいだ。この活気は、昔住んでいた下町を思い出して、なんだか楽しくなる。


「あ! あのフィッシュフライサンド、美味しいって評判なんだよね。混んでるけど」


 可愛い魚のイラストの旗が立つ屋台を指差すユニに、


「私が買ってきましょう。座れる場所を確保しておいてください」


 ゴードンが率先して行列に並び出す。わあ、上官をパシらせちゃった。

 途中にあった肉屋で窮奇用に羊の生肉を買って、空いているベンチに腰掛ける。しばらくすると、フィッシュサンドを三つ抱えたゴードンが戻ってきた。

 わーい、と渡されたランチに躊躇いなく齧りつくユニを横目に、私は恐縮してしまう。


「すみません、いくらでしたか?」


「部下からお金は取れませんよ」


 さらりと返す副隊長は大人だ。……けど、


「とはいえ、フィルアート殿下との食事に比べたら微々たる金額で申し訳ないですが」


 余計な事を言いだした!


「え? なになに? フィルアート殿下との食事って何?」


 途端に食いつくユニに、ゴードンはしれっと、


「エレノアさんはフィルアート殿下とデートしたことがあるんですよ」


「うそ、マジ? やるじゃん、エレノア! じゃあ、殿下の推薦で騎士団に入ったって、そういうこと!?」


 興味津々で詰め寄ってくるユニ。あああ! 面倒な誤解を生ますな、副長!


「違う! 兄達の紹介で会っただけ。それ以上の進展はないよ」


 精一杯否定する私を置いて、ユニは両手を組んで明後日の方向を向いて目を輝かせる。


「王子様とのデートなんて素敵! どこに連れてってもらったの?」


「ええと、荒野?」


 そうとしか表現できんぞ、あの場所は。


「何食べたんですか?」


 今度はゴードンに訊かれる。出された食事は勿論、


「……鹿」


「鹿? 荒野に鹿肉の美味しいレストランがあるの?」


「ううん、現地調達」


「現地調達?」


 両脇から二人に顔を覗き込まれ、私は「実は……」とあの日の詳細を語った。

 話を聞き終えたユニとゴードンは互いに顔を見合わせて……。


 遠慮なく大爆笑した。

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