Session2-5 ディックの場合
GM:農場北では、リカントの少年……ディックが、収穫物の積み込み作業を行っている。歳はかなり若い。14、15歳ほどだろうか。彼は気だるそうに、収穫物の詰まった袋を背に座り込んでいる。
アルクトス:若い。
オルフ:仕事の様子はどう?
イスデス:芳しくなさげかしら。
ジャンくん(シュシュ):『ふむ、彼が…この若さで夢を絶たれるのはさぞ堪えただろう』
GM:力仕事ではあるが、1日で終わる程度の作業量しか任せていない様子だ。だが、君たちでも昼過ぎには終わるほどの量なのに、彼はまだ半分くらいしか手を付けていないようだ。
アルクトス:おっと。
オルフ:「お前がディックだな」じゃあ声をかけよう。
GM/ディック:一瞬びくりと耳を立て、振り向く。どうやら、座りながら何か考え事をしていたようだ。「ん、ああ……? ……誰だ、アンタたち」
イスデス:「初めまして。どもども、派遣されてきた者です」
オルフ:「警備の依頼を受けた冒険者だ。今、ここを回ってる」
ディック:「冒険者……、そ、そうか。ったく、メンドーな……」ディックは冒険者、という言葉を聞いた瞬間、ばつの悪そうに目を逸らしたことがわかるだろう。
シュシュ:「(毛嫌いするのも当然……でしょうか)」
シンカイ:「シンカイ・フォン・クロンヘイムです。見回りとご意見収集中ですわ」
オルフ:「その一環でサボってる奴がいれば報告しろとも頼まれてるけどな」
GM/ディック:「……オッサンの差し金か。貧民街上がりなんだ、しょうがないだろ、慣れない仕事なんだ。ちょっとくらい大目にみてくれりゃいいのにさ」
シンカイ:「ガストン様のほうから、話を聞いてやってくれと頼まれもしました。上の空だと、心配されていましたよ」
シュシュ:「……なにか心配事でもあるのでしょうか」
GM/ディック:「……ガストンが?」上目遣いにシンカイに目線を向けるも、すぐに目を逸らすディック。どうやら、何か考え事があるのは確かな様子だ。
アルクトス:「別に言いたくないなら無理に聞こうとは思わんが」
イスデス:「悩み事でもあるなら、神官である拙が聞くだけならできますが」
GM/ディック:初めて会った者たちだ。信用もなく、さすがにすぐには言い出すことはできないだろう。
「フン、人の事より、まず自分からって教えられなかったか? ……冒険者なら、冒険譚のひとつやふたつ聞かせろよ」少し目を輝かせる。どうやら、冒険の話が聞きたいようですね。
アルクトス:(教わった記憶が)ないです。
イスデス:記憶喪失だもんねえ。
オルフ:「そもそも現状に文句を言うしかねぇ奴の話になんか興味もねぇよ」さっきとは変わってちょっと冷たい様子になってます。
イスデス:「ふぅむ。じゃあラージャハ帝国の牢獄に1年以上居座り続けた話から始めようか。そう、あれは語るも涙聞くも涙な……」そう言って一人で語り始めます。ほっといていいです(笑)。
アルクトス:……とりあえずネタのためにメモっときます。イスデスストーリー。
GM:いや、彼はイスデスの話に聞き入っているように見える。特殊な判定を行うよ。任意の冒険者、あるいは一般技能レベル+精神力Bを基準に、目標値12の判定をしてもらおう。
君たちは、それに関する話ができる。したくない人は、判定を放棄しても大丈夫だ。
シュシュ:えー……PC的にはちょいおこなんですが、物乞い精神で振ります。基準値低いけど誰か成功してくれるやろ……(ころころ)14、成功しちゃった。
おら! 聞かせてやるよ! 貧民街よりも酷い話をな!!
オルフ:同じくおこです。うーむ……放棄しておこうかな。
シンカイ:(ころころ)成功。偉大なる老師に師事しそして裏切られたために冒険者となった前向きなお話をしました。
イスデス:前向き……??
アルクトス:じゃあ、作家で振るか。取材中の変わった話とか……(ころころ)失敗してしまった。
イスデス:墓守+精神Bで。「やぁ、拙の出身は乾いた丘の上でしたから……」(ころころ)16。
GM/ディック:「……そっか。あんたらも大変だったんだな……」ディックは、シュシュやシンカイ、あと何よりイスデスの話を聞いて、多少気が紛れた様子だ。
イスデス:本当にこんな話でいいのだろうか(震え声)。
GM/ディック:ていうか、暗い経歴の人多くない? って顔してる。
アルクトス:気づいてしまったか。
オルフ:イスデス以外ろくでもない。
シュシュ:癒し枠、イスデス。
GM/ディック:まあ、冒険者なんてそんなもんだ。君たちの話を聞いて、ディックも少しずつ口を開く。
「……現状には……満足していないのは確かだよ。食わせてもらってんのには、もちろん、感謝してるけどさ。なんつーかこう、やる気がわかねぇっつーか。
まあ、少しは働いとかなきゃ、また貧民街送りになっちまうのもヤだし。アンタらもがんばってんだ。オレも……とりあえず、このくらいは片付けておかなきゃな……」
イスデス:「良い心がけかと。まぁ、仕事は全部終えた上での言葉なら、だけどね」
GM/ディック:「はは……まあ……頑張るよ。一応……」重い腰を上げて、ディックは残りの作業に手を付け始めるだろう。
シュシュ:「……ええ、ディック様。やるべきことをやらずに望まない環境から出て夢を叶える。そんな裏技みたいなこと出来ないのです」攫われでもしない限りは……と心の中で付け加えて。
オルフ:「自分を助けられんのは自分だけだ。お前みたいなやつに立ち止まってる時間なんざ無い」無論、自分にもというのは心の中に飲み込む。
シュシュ:プロスティチュートで振ることも考えていましたが、14歳に聞かせる話でもないし、空気がやばくなるのでやめました。
オルフ:はい。
アルクトス:冒険者の話のはずが何故か全然違う話ばっかりっぽいアレ。
シュシュ:まだ冒険者歴1週間だからね……。
イスデス:他の人は冒険者としての話してくれるかな~と思いました。
オルフ:そもそも冒険者としてやっていけなくなった先で仕事をさぼってる奴が気に喰わなかった奴です。自助努力がんばっ! って。
シュシュ:サボってたら命取られないだけ幸せやね君、って気持ちもどこかにある。
シンカイ:しかし労働者はきちんと報われるべきと考えたい官僚の娘。治世にも責任はあると考える派。
GM:グランゼール全体の問題だから難しいね……。
シンカイ:ふむ、人攫い云々に関してはー……聞いておきましょうかね。びびらせるだけになるかな。
イスデス:聞いておいてもいいかと思いますね。
シュシュ:もし脱走を考えていたら、防止にもなりますしね。
シンカイ:それでは。
「わたくし達、ここ最近増えているという『此処からの脱走者や人攫い』に関する案件も依頼として引き受けております。なにか御存知なくて?」
GM/ディック:「あー……人さらい、脱走者、か、うん。……まあ聞いたことはある、かな?その、オレは脱走とかしねぇし、大丈夫だよ。ほら、アイツらの事放っておけねぇしさ」若干、どもりが混じっているだろう。
オルフ:「あいつら?」
GM/ディック:ディックは少し焦った様子で、遠方のガストンとピピンを指す。「……一緒の冒険者パーティだったんだ。あいつらは」
シュシュ:「……一緒の夢を追いかけていらしたと」
GM/ディック:「うん。グランゼールで出会って、迷宮に挑んだけど、……失敗して。それで、もう一度やり直そう、って思って……借金をちゃんと返して、また装備をそろえようって……それで、ここで働き始めたんだ」
オルフ:「……良く聞く話だ。そこで潰えず再起の目があるだけマシな方だな」
GM/ディック:「あはは……そうだな。オレはともかく、あいつらはちゃんと再起できるはずだし」彼の言葉に嘘はないようだ。が、君たちはどことなく引っかかりのようなものを感じるだろう。
オルフ:引っかかりが何処にあるのか、知力判定とか振れますかね。
GM:ほう。では、そうだな……冒険者+知力B基準で、真偽判定を振ってもらおう。目標値は(ころころ)11!
イスデス:(ころころ)成功。ひっかかりどーこだ。
GM:では。成功者のイスデスとオルフ、シンカイは、『人さらいの噂』から話を逸らしたように感じたでしょう。
オルフ:「(……さて、故意か、あるいは単なる偶然か……)」あー、人攫いか脱走って聞いた時即座に自分は脱走なんてしない、って言うの言われて見りゃ不自然だな……そんな疑われそうな事言わないよな……。
シュシュ:たーしかに。
アルクトス:なるほど。
GM:脱走、それから仲間の方面へ、なんとか話題を逸らそうとした感がありますね。ですが他の2人や農場に感謝しているというのは事実のよう。人さらいを自ら画策している、といったようには感じられないだろう。
シュシュ:再起を半ば諦めてる感もありますね。
オルフ:どうすーる? 詰めてみる?
シュシュ:それもありだし、予想が出来てるなら泳がせておくのも手。
オルフ:なんか悪い奴じゃないとか、人攫いをかばっているとかそういう感じかな……。
イスデス:仲間の一人が、とかですかねぇ。
シンカイ:うーん、いっそ踏み入っておきたいが、距離とられる可能性もあるか。
オルフ:取り合えずまあ、釘刺して別れておく、くらいがちょうどいいか。
アルクトス:気づかなかったし、おまかせる。
オルフ:「ま、蛮族の襲来だとか人攫いだとか、色々物騒だ。再起したいなら気をつけとけよ」
シンカイ:「えぇ。何かの気の迷いで、または意図せずとも加担してしまっては。せっかくの素晴らしき再起もご破算となってしまいますから」
GM/ディック:「……ああ、うん。ありがとう」
シュシュ:「……私見ですが、きっとお二方も3人一緒での再起を望んでおります。それでは、失礼しました……」ぺこり。
イスデス:「また皆で冒険ができるといいね。そうなるように祈っているよ」
GM/ディック:「……うん」ディックは君たちを見送る。その表情は当初よりも。どことなく安らかになったように感じただろう。
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