第136話 女王との謁見

「私、アルファーを含め以下72名! キング・イチロー様の配下に加わりました!」


アルファー以下のジェネラルが整列をして俺に敬礼する。


「うむ」


俺は支配者然として、頷いて答えるが、もちろん下半身は裸である。


「これより、女王攻略隊を結成し、女王に突撃いたします!(キリッ)」


ベータが決め顔で報告してくる。


「戦力は大丈夫なのか?」


「はい! 新たなジェネラルから情報更新をしました。敵のジェネラルの数多くをこちら側に引き込んだ結果、我ら、キング・イチロー様の軍勢が敵側女王の軍勢を圧倒する数になりました!(キリッ)」


 そりゃそうだよな… アルファーとベータを引いたら、ここにきて70人をわからせて味方に引き込んだんだからな… 俺だけだったら30人がいい所だったし、マイSONのお陰でかなりの数を引き込めた。しかも、マイSONはまだまだやる気だからな…末恐ろしい…


「それでは、女王攻略隊は先行いたしますので、キング・イチロー様は後からごゆるりとお越しください」


「フハハハハハ! では行くのだ! 戦士たちよ! 必ずや女王を見つけ出し、我が前に跪つかせるのだ!!」


「ははっ!!」


 俺は悪の総統の様に、外套をはためかせながら、女王攻略部隊の者たちに威風堂々に威厳を込めて命じる。もちろん、下半身裸だ。


「…なんていうか… 悪の魔王の姿が様になってきやしたね…」


「ズボンさえ、履いて居れば様になっていたのであろうに…」


「しかも、周りに触手がうにょうにょしているし…」


俺の後ろで、カズオ、シュリ、カローラがひそひそと話をし始める。


「うるせえな! お前ら! 俺がせっかく、下半身裸な事を忘れてその気になっているのに!」


俺は三人に振り返って怒鳴る。せっかくのいい気分が台無しだ。


「キング・イチロー様、先行したものが早速、ジェネラルを一人連れ帰りました。同化をよろしくお願いします」


「お、おぅ… 分かった…」


くっそ、なんやかんやでめっちゃ忙しい…


 俺たちは時折、先行部隊が連れてくる敵のジェネラルを同化しながら、坑道の先を女王目指して進んでいく。その中で俺は考える。こいつらジェネラルの存在は、良く考えたら姉妹ではないかと。そうなると俺は姉妹100切りを達成した人類で初めての男になるのではないかと…


 まぁ、それより前に、娘を100人も産む存在なんていないであろうが… いや、皇帝とかでハーレムもっていたらあるのか? 腹違いになるが… でも、やはり、同腹で姉妹100人切りを達成するのは俺だけになるだろう。


俺がその事に気分を良くしていると、女王攻略部隊であったベータが俺の所へ戻ってくる。


「キング・イチロー様! お待ちしておりました、こちら女王の部屋でございます!(キリッ)」


「へっ? もう女王の部屋なのか? 敵の最後の抵抗とはなかったのか?」


 俺達は今、坑道の出口あたりにいる。すぐそこまで抜ければ女王のいる広間となる訳だ。しかし、苛烈な戦闘音など聞こえることなく、あっさりと女王の広間に辿り着いたことに、俺は少し目を丸くする。


「はい、既に敵のジェネラルはほぼ全て同化いたしましたので、残るは女王ただ一人となります(キリッ)」


「という事は、俺は知らず知らずのうちに、百人以上のジェネラルを同化していたのか?」


「はい、さようでございます! ちなみに総数は108名でございました!(キリッ)」


 俺はベータのその言葉に思わずガッツポーズをとり、頭の中でロッキーの勝利のテーマが流れて、思わず『エイドリアーン!!』と叫びたくなる。


「あ、主様よ… 敵のジェネラルを駆逐したのはよいが、何故それほどまでに喜んでおるのじゃ? まだ女王はおるのじゃぞ?」


「シュリ! だって、お前、100人切りだぞ!? しかも姉妹100人だぞ! 俺は人類史上、初めての偉業を成し遂げたんだぁ!! エイドリアーン!!」


俺は感極まって、シュリを抱きかかえる。


「な、なんじゃ!? 急に!?」


シュリは突然の俺の行動に戸惑いを見せる。


「シュリ、記念のトロフィー代わりにもちあげられているんじゃない?」


カローラがぼそりと言う。


「おっ!! カローラもいるじゃねえかっ! お前も抱きかかえてやるっ! 100人切りと姉妹100人切りのダブルトロフィーだぁ!! エイドリアーン!!」


「あっ! ちょっと! しまった!」


 俺は捕まえられた猫の様にもがくカローラを無理矢理抱きかかえて、シュリと一緒にダブルトロフィーとして掲げあげる。


「エイドリアーン!!」


「だから、エイドリアンとはなんなのじゃ!!」


「に、逃げ遅れてしまった…」


掲げられたシュリとカローラがぼやく。


「も、もしかして、あっしもですか!? こ、心の準備が…」


掲げられる二人の様子を見て、カズオが自分もされるのではないかとたじろぐ。


「いや、それはねえわ… よいしょっと」


俺はカズオの言葉に冷めて、二人を地面に降ろしてやる。


「い、一体なんじゃったのじゃ…」


「ふぅ…やっと解放された…」


シュリはぼやき、カローラは胸を撫でおろす。


「お済になられましたか? では、中へ進みましょうか、キング・イチロー様」


「うむ! いざ参ろうか!」


さきほどのテンションはさておき、俺は支配者然とした態度で先へと進む。


 広間の中は、流石、女王の広間だけあって、かなり広く、今までの広間の数倍の広さがあり、そのうえ、自然の地面や壁ではなく、ある程度整えられていて、少し壮麗な雰囲気を醸し出している。


「それで、女王ってのはどこにいるんだ? って、ん? んんっ!? もしかしてっ!? もしかして、あれか!?」


「はい、左様にございます」


 俺が目の当たりにしたのは、女王の広間の奥に横たわる、鯨ぐらいの大きさはあろうか、巨大なカブト虫の幼虫の様な芋虫の姿であった。その巨大な芋虫は、なんだかぶよぶよしており、もぞもぞと動くところを、味方になったジェネラル達が取り押さえている。


「い、いや、こんなのどうしろっていうんだよ…」


「我々と同じように同化作業をして頂ければ、キング・イチロー様の配下に下ると思われます」


となりのアルファーがあっさりと答える。


「同化作業って… いくら俺でも芋虫と致す趣味は持ち合わせていないぞ…」


「大丈夫でございます。あの芋虫の様に見える部分は、我々で言う所の第二腹部です。女王の本体は、あの芋虫の頭部についている人型でございます」


そういって、アルファーが芋虫の頭部を指さす。


「あっ 本当だ、芋虫の頭部に人の姿がある」


 目を凝らして見てみると、ジェネラル達に取り押さえられて、芋虫の頭部に座る様にいる女王の姿があった。






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