詩集 化粧箱

言葉で抱きしめられたなら

だいじょうぶ

スピーカーの先で

きみの殊勝な声がする

繊細な

マイクがそっと拾った

落とし物のようなため息

何がだいじょうぶなもんか

アプリを開いても

終電はとっくに過ぎていて

始発では　

もう……とっくに遅すぎて

マップの上

ふたつの点を結ぶ線（ライン）が

たった数センチの距離がもどかしい

焦ったい気持ちで

窓の外の月を見やる

月よ

お前との距離は約24万マイル

お前の光は1.3秒後にしか届かないのに

それでも闇を照すことができるのか

俺の言葉はいますぐ届くというのに

抱きしめてあげることもできない

言葉にはできないことがある

手を握り

抱きしめることでしか

伝えられないときがある

どうしても

いますぐきみに伝えたい

心が涙であふれても

いまきみを――

言葉で抱きしめられたなら

もうこれ以上

きみの心が痛まないように

言葉で抱きしめられたなら

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お読みくださり有難うございます。

繊細で優しい心を持った皆さまが、ときにその羽を休められても、やがて世界と向き合おうとまた懸命に言葉を紡がれる姿はとても尊く美しいと作者は思います。腕は届きませんがせめて言葉で抱きしめられたなら。

ギュー――！╰(*´︶`*)╯