思い出なんて、いるものか
思い出なんて、いるものか
部屋に残った
あなたの荷物を
どんどん詰めていく
歯ブラシも
ブランケットも
何もかも
手当たり次第に
詰めていく
詰め込んでいく
袋がいっぱいになるまで
詰め込んでいく
似合ってた帽子も
詰め込んでいく
初めてのデートで
一緒に買った水族館のキーホルダーも
たまに借りた
あなたのシャツも
思い出なんて、いるものか
全部袋につめて
気がつけば
急にがらんと広く感じた
あなたの気配が
消えてしまった部屋に
ぽつんと一人
取り残されて
秋の陽はもう
すっかり薄暗くなって
まだ9月だというのに
肌寒く感じて
袋の口を結ぼうとした
そのとき
凝縮された
あなたの匂いが
わたしを包み込んで
こらえていた涙が
一気にあふれ出して
だから
ブランケットを引きずり出して
袋を枕にして
薄暗い部屋で
くるまって泣いた
こんなにさみしいなら
こんなに泣きたいなら
思い出なんて、いるものか
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お読み頂いてありがとうございます
昔webで投稿されてたどこかで読んだ記憶のショートストーリー
をモチーフにしたものです
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