第38話 類は共をよ…ぶ?

「旦那!いつもありがとうございます!」


何故か森に潜んでいた脳筋戦士ディフェンスオブDFは、ゲロをぶっかけたナケネに礼を言う。


その様子に、俺たちはドン引きしていた。

いや、嘘です。ドン引きしていたのは雪だけでした。


エイルは何か勘違いしているのか、謎の感動を向けていたり、俺は「あいつらを殺せぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」と叫ぶ雪を宥める素振りをしながらからかったりしている。


動揺して叫んでいるのは雪だけだそう。


その後、ナケネは報酬をもらい、ご機嫌な顔で森を去っていった。


結局、《オゲロゲロビーム》とはなんだったのか、それは神と猫とゲロしか知らない。


         ♣︎


午後4時ごろ…


「また学校に入らせてくださいって…大掛かりでお出迎えしたのが馬鹿馬鹿しく見えるじゃないですか」


生徒会長は頬を膨らませてぶつくさ文句を言いながら門を開けてくれた。


ナケネはちょくちょく、透明化にすり抜けの能力を駆使していたのか、無駄に洗練された無駄のない動きで学院に入るところを、透明化解除の道具で見ていた。


「まぁまぁ、学院に侵入しては数10人単位でナンパされる需要のある俺が行くんだからいいじゃないか」


全く、モテるおと…女は困っちまうぜ…!


「ちょっと待ってください!今、侵入って言いました!?」


「そうですよ〜どこで見つけたのか、奇想天外な方法で侵入してはナンパして、100人斬りのイアさんって言われてますよ〜」


『おい、クソ兄貴…お前、何してんだぁ?』


ひいいいいいいい!雪のヤクザモードが発動している!


だってしょうがないじゃん!女の子になったらやりたくなるじゃん!


『あ“?』


ひいいいいいいいいいいいいいいいい!


「さ、さてナケネを追っかけるとしますか!」


雪のヤクザモードに完全にビビり、若干声が震えながら生徒会長の開けてくれた門をダッシュで切り抜けながら、未だに無駄に洗練された無駄のないステップで駆けていくナケネを追いかけて行った。


触らぬなにかになんとやら。ここでチキンの俺には、ヤクザモード雪に立ち向かう無鉄砲さはなかった。


          ♣︎


「あ、イアさん!こんにちわ、今度お食事でもどうですか?」


「おう、また後でな!」


こんな会話が今10数回行われている。その度に、雪は何故かあんぐりと口を開ける声を出している。


『なんだろう…例え体が違っても、こいつがモテるのは何が殺意が湧いてくるんだが…』


「いや、なんでだよ…俺のリア充街道まっしぐらのはずの人生プランを潰すんだ…」


「…私も、イアさんはリア充にはなれないと思います…」


なんだとエイラこのやろう…


「だって、時にセクハラしてくると思ったら、急にぶっ殺してやるとか…乙女さがありませんよねぇ…」


「『グハァッ!』」


雪も心当たりがありすぎるのか、メンタルが傷つき、血反吐を吐いた。


『クソウ…別に男にさして興味がないとは言え、面と向かってモテないと言われるのは、心にくる…!だけど事実故に何も言い返せない…!』


人気がなくなり、透明化を解いたナケネを追いかける。奴は相変わらず、いつもの笑わせにかかっているとしか思えない顔芸を披露しながら3階へと進出していった。


「……ここは…?」


ずいぶん、人気のないところだ。3階に来るのは初めてだが、特になんの面白みもない。


「ここは、教授とか、博士の本格的な研究室とかがある部屋ですね…昔は生徒たちがよく侵入して遊んでいたのですが、怪談話が影響して通らなくなっているそうです…」


『ああ…じゃあここに、あのキメラ製造、諸悪の根源の本格的な研究室があるのかな…』


なるほど…それなら同族なんちゃらでナケネが寄ってきているのかな?


「…それより、ここ、怪談があるんですか…?」


おお、これは珍しいエイルが微妙に怖がっている…不本意ながら、かわいいと思ってしまった。


          ♣︎


「おお、立ち止まった!」


そんなこんなでずいぶんと長い廊下の旅で、ナケネが足を止める。


「って…あそこには何にもないはずなんですけど…」


ナケネは何もない虚空を見上げ、物思いに耽った顔をしている…赤色の胴体が現れ、俺たちの間で静寂が訪れた。


「あそこに、鏡があるんなら多分。日課の顔芸の練習してるんだよ」


「「芸人ですか…」」


だって、あいつ、ほとんど芸人じゃん…違うところがあるとすれば、人ではないだけである。


『ま、まぁ、あいつなら顔芸の練習してるんだろ…毎回バリエーション増やしてるし』


その後、ナケネは透明化して、マインの研究所に入っていった。尚、鍵がかかっているので俺たちはそこには入らなかったという…


          ♣︎


帰り道。夕暮れが地面を焦がす中、先に帰っていったナケネを追いかけるように、歩いていた。


「結局、あいつは行動がおかしいってことしか分からなかったなー」


やっぱりあいつは芸人か…


そんなことを思っていると、いきなり雪は貴重な1日を1言で破壊するようなことを言ってきた。


『なぁ?なんで私たちってあいつのこと調べてたんだっけ?』


……


「それは…」


そもそもこれは雪の提案したものであって…


「わかんね!」


ま、いっか!ニートにとって、貴重な1日をドブに捨てるようなものだったし!






















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