第6話
マリオンはそろそろ限界だった。
妻という名の同居人に、己の秘密が露見しないように気を使い続ける生活にマリオンは疲れ果てていた。
生まれてこのかた、外に出れば全ての人間に嘘をつき続けてきたが、流石に屋敷の中でまで同じように振る舞うのは、もう無理だとマリオンは思った。
クリスティーナにはある種の好意を持ってはいたし、可愛らしい女性で大切にしたいとは思っていたが、どんなに努力しようとも、マリオンには彼女を身も心も愛しぬくことは不可能だった。
それこそ、妖精にかどわかされでもすれば、何とかなるかもしれないが・・・。
そんなに都合の良いことは、夢物語の中でしか起こるまいと思った。
短い結婚生活ではあったが、そろそろクリスティーナに対して、当初から予定していた本題を切り出さなくてはならないと、マリオンは覚悟を決めたのだった。
同時にクリスティーナは自分の頼み事を引き受けてくれるだろうか・・・とマリオンは急に不安になった。
最低だと罵られるかもしれないし、彼女の方から別れを告げられるかもしれない。
もし自分が逆の立場であれば、馬鹿にするなと言って殴りつけるかもしれない・・・。
マリオンは、それほど酷いことをこれからクリスティーナに頼もうとしていた。
けれど、クリスティーナにこの事を依頼する為に、彼女の家を援助し婚姻を結んだといっても過言ではないのだから、それでも伝えるだけ伝えなくてはならない、とマリオンは思うのだった。
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