外伝~ホムラとシノブ

 ……一体、何のお話なのかしら?


 いきなり、ひと気のないところに連れてこられてしまいましたが……。


 念願だったユウマの仲間になれた直後、シノブという女性に誘われたのです。


 私がユウマを好きということは知らないはず……。


 そうなると……なんで呼ばれたのかしら?




「ホムラさんは、ユウマさんが好きなんですよねー?」


「ぽえっ!?」


 思ってるそばからバレていましたっ!


「ぽえっ……初めて聞きましたね」


「う、うるさいですわっ! べ、別に好きなんかじゃありませんっ!」


 うぅー……なんでいつもこんなセリフしか出てこないのっ!


「あっ、なら良いんですよー。では、私は好きなので邪魔しないでくださいね?」


「うっ……」


 良いなぁ……どうして、そうストレートに言えるのかしら?


「……私はユウマさんの役に立ちたいです。そしてユウマさんを煩わせたり、心苦しい思いをさせるのは嫌です。もちろん隙があれば攻めはしますけど、ユウマさんが本気で嫌がることはしないつもりです」


「シノブさん……」


 その目はとても真剣で、私は自分が恥ずかしくなってきます……。


「貴女がユウマさんを好きではないというのなら、それはそれで良いんです。私にとってもライバルが減って万歳ですからねー。でも……仮に好きだった場合、同じパーティー内で好きな人が被るという状況になりますよね?」


「そ、そうねっ! か、仮にですけどっ!」


「そしたら、ユウマさんは気まずいというか心苦しいと思うんです。本人には、今はその気はないようですし……でも、貴女が好きでないなら良いです」


 羨ましい……きちんと好きと言えて、相手の気持ちを考えられる貴女が。

 私は恥ずかしいとか、自分の素性のこととか……そんなことばかり。

 でも……私だってユウマが好きです。

 見た目以外を褒めてくれた男性は初めてだったもの。


「ワ、ワタクシは……ユウマが好きですの……」


 熱い……! 身体が燃えるよう……!


「知ってますよー」


「はえっ?」


 一世一代の告白にも関わらず彼女は平然としております!


「そりゃーわかりますもん。同じ人を見ているんですからー」


「そ、その割には随分と余裕ですわね? ワタクシなんか眼中にないと?」


 確かにシノブさんのが素直で可愛いけど……。


「いえ、そんなことはありませんよー? 貴女はとても美人ですし、ユウマさんと同じ人族ですからね」


「……とりあえず、ありがとうと言っておくわ。では、なぜ?」


「うーん、そうですねー……割と、貴女を気に入っているからです」


「へっ?」


 シノブさんに気に入られている……?

 私はひどい言葉ばかり……。


「私の正体には気づいていますよね?」


「ええ、エデン出身の方ということは……」


 私は生まれにより、彼らと接する機会があります。

 それに亜人という言葉を嫌うことも。


「貴女は破廉恥とか、はしたないとか言いましたけど……一度たりとも言いませんでしたから——亜人のくせにと」


「そ、そんなのは当たり前ですわっ!」


 私はこの国を代表する家の者!

 たとえ周りがそうでも我が家だけはっ!

 それが亡き父上と母上との約束ですっ!


「えへへ、そう言ってくれるんですねー。でも、それって少数派なんですよ。口では言えますけど、態度は誤魔化せませんから」


「……否定はできませんわね」


 まだまだ他種族への忌避感は根強いものがあります。


「でも、貴女はそうしなかったのでー。だから、上手くやっていけるかと思って」


「えっと……どういう意味かしら?」


「二人でユウマさんの女になりましょう」


「な、なっ——!? やっぱり破廉恥ですわっ!」


「むぅ……そんなに変ですかね? 子供を作るのって大事なことなんですよー?」


「わ、わかってますけど……二人でっていうのは?」


「あれ? 一夫多妻制じゃないんですか?」


「い、いえ、一夫多妻制ではありますわ」


「なら良いじゃないですかー。最近、ユウマさんに色目を使う女の人が増えてきて困ってたんですよー。そんなミーハーな人達に用はありません」


 ……確かに、パーティーを組んだ女性の方々も言っていたわ。

 ユウマって貴族なの?とか。

 まだ恋人はいないのか?とか……。

 きっと名前が知れてきて、ただのルーキーではないことに気づいたのでしょう。


「なるほど……」


「なので、私達で牽制をしようかと。すでに二人いて、隙間はありませんよーって。ユウマさんは、今のところ恋人を作る気はないみたいですから」


 おそらく、貴族であることが関係してますわね……。


「つまり、二人でユウマを守るということですね?」


「そういうことですねー」


「そ、そういうことでしたら……良いですわっ!」


「決まりですねー。じゃあ、よろしくです——ホムラ」


「こ、こちらこそ——シノブ」


「えへへー、人族の女の子の友達が出来ましたー」


 わ、私が友達!?


「あ、え、う……よろしくしてあげますわ」


 もう! なんでそんな言葉しか出てこないのっ!


「はい、よろしくです。あっ、それで……」


 その後、ユウマ達がギルドマスターから依頼を受けていること。


 もしかしたら伯爵クラスが関わっているかもしれないこと。


 そして返事と調査待ちということを聞かされます。


 ……これは、私でも力になれることがありそうですわ。

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