第620話 チャンピオンベルト

 30階層のボスとして登場したガチョピンとモック。

 そして突如現れたサンダー大佐。


 ボクサー&空手家&プロレスラーという面白い特性を持ったヤツらだったのもあり、俺も親父もミスフィートさんも、自分の意志で格闘技で闘うことを選択した。


 俺の対戦相手でもあるガチョピンとの殴り合いは激しいモノとなったが、ここぞのタイミングで繰り出されたデンプシーロールの対処に迫られることとなった。


 すでに相手の技は発動している。

 考える時間は極僅かだ!対応を間違えば敗北するだろう。



 ―――――だが俺はボクシング漫画を愛する男。この技の攻略法は知っている!



 カウンター使いならキレイなカウンターを当てられるのだろうが、俺は素人。

 迫るガチョピンの右フックに合わせ、相打ち狙いの無骨な右フックをぶつける!



 ゴシャッッ!!



「いってえええええええええええええええええええ!!」



 ぐおおおおおォォォォォ!やっぱりコレは無理だ!!


 デンプシーロールは止まったけど、俺の身体がもたねえよ!

 それに顔がボッコリ腫れていたら、夜伽の時にソフィアが萎えてしまうだろ!!



 ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン



「チッ!」



 ガチョピンが再起動しやがった!!マジでどうする!?


 ・・・いや、待てよ?


 そうか!俺の場合、漫画の真似をしなくてもよかったんだ!


 迫るガチョピンの左フック。

 さっきは相殺を狙ったが、今回の狙いは違うぞ!



 ドガッ!


 左フックを放つ為に前に踏み込んだ軸足にローキックを放った。


 そう、俺はボクサーじゃなくキックボクサーだからな!

 パンチで相殺しなくたって、俺には蹴りという手段が残されていたんだ!!


 ゴスッ


 遅れて発動した左フックだったが、そのパワーは完全に失われていた。



「効かぬ、効かぬのだ!ガチョピン・・・!!」



 それでも闘争本能のままに右フックを放つガチョピン。


 悪いがコレで決めさせてもらうぞ。

 闘いには、いつか必ず終わりが来るのだ。



 ―――――緑の怪獣の懐に入り込み、顎に飛び膝蹴りを放つ。



 ゴシャッッッッッッッッ!!



 その衝撃で宙に浮いたガチョピンが、ゆっくりと地面に倒れた。



 ドサッ



 やった!!ついに俺はガチョピンからダウンを奪ったんだ!!



「ワーン!  ツー!  スリー!  フォー!  ファイブ!」



 無情にもカウントは進んでいく。数えてるのは俺なんですけどね!



 地面に手をつき、何とか起き上がろうとしたガチョピンだったが、膝蹴りのダメージは大きく、再び地面に倒れて動かなくなった。



「ナイン!  テン!!  勝者、赤い流星!!」



 よっしゃああああああああああああああああああ!!一人で騒いでバカみたいだけど、10カウント入ればガチャピンも納得の敗北だろうよ!



 健闘を称えようと、地面に倒れている緑の怪獣の側に近寄って行った。



「あれ?動かんな」



 ペチペチと顔を叩いてみるが、ガチョピンはその機能を完全に停止していた。


 嘘だろ?あの飛び膝蹴りが致命傷となったのか・・・。

 そしてなぜか倒れたガチョピンの横に、チャンピオンベルトが転がっていた。



「いやいやいやいや!こんなのさっきまで無かったぞ!!もしかしてガチョピンを倒したご褒美として、このアイテムが出現したのか!?」



 なんてニクイ演出なんだ!猫ちゃん本気出し過ぎだろ!

 もしかすると、格闘戦で倒したからチャンピオンが移行したのかもしれん!!


 せっかくなので、チャンピオンベルトを腰に巻いた。



「メッチャ気分が良いぞ!!これが世界の頂点に立った景色か・・・」



 でも目を閉じて動かないガチョピンを見てたら悲しくなってきたので、そっとマジックバッグに収納した。


 格闘戦で倒したおかげで、綺麗なガチョピンを手に入れることが出来ました!

 城に帰ったら玉座の間に飾ろう。



「小烏丸も勝ったのか!!」



 声のした方を見ると、そこにいたのは満面の笑みを浮かべたミスフィートさんだった。腰にはチャンピオンベルトが巻かれている。


 ・・・いや、それはおかしくない??


 空手の大会って、優勝してもベルトなんか貰えないよな?

 もしかしてモックは、キックボクシング系の大会優勝者だったのか!?



「ははははははっ!ミスフィートさんもチャンピオンベルト巻いてるし!」

「赤いのを倒したら、地面にコレが落ちていたのだ!!」

「アイツの名は『モック』です。強かったでしょう?」

「強かった!!あっ、緑色はもう回収したのか。強かったか?」

「メチャクチャ強かったですよ!何度もいいパンチをもらいましたもん」

「そうか、しかし楽しかったな!あのダンジョンも楽しかったが、京の都ダンジョンも全然負けてないぞ!!」

「これでガチャがあれば完璧だったんですけどね~」



 猫ちゃんに頼めば作ってくれるかもしれんけど、彼女は指名手配中の女神だから、あまり無駄な魔力を使わせられないんだよね・・・。



「小烏丸!お義父様が何か凄い大技を繰り出したぞ!!」

「なんだって!?」



 見ると親父のバックドロップで、サンダー大佐が地面に叩きつけられていた。


 しかし親父の攻撃はそこで終わらず、サンダー大佐を無理矢理立たせ、ブレーンバスターの態勢に入る。



 ドガーーーーーーーーーーーーーーーン!!



「なにィ!!垂直落下式ブレーンバスターだとお!?」



 そして親父は、倒れたサンダー大佐の上に覆いかぶさった。



「ワーーーーーン!  ツーーーーー!  スリーーーーー!!」



 うおおおおお!3カウント入った!!親父の大勝利だ!!



「勝ったぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「やったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」



 居ても立っても居られず、ミスフィートさんと一緒に親父達の元へと走った。



「二人とも、やったな!」

「鮮やかな勝利、お見事!」


「おお!?もしかして今の大技を見てたのか!!」

「隊長も小烏丸も勝ったの!?」


「もちろんだ!」

「お父様、ベルトが出たぞ!」

「ついでに優勝トロフィーも出てるじゃん!」


「はあ!?これってチャンピオンベルトじゃねえか!!一体どこから出てきた?」


「なんか格闘戦で倒すとチャンピオンが移行するみたいだぞ?ボスだけなのかと思ったが、サンダー大佐もその道のスペシャリストだからボス扱いだったのかもな」

「お父様も、それを腰に巻くといい!」



 親父もチャンピオンベルトを腰に巻いて、両手を天に突き上げた。

 優勝トロフィーを持ったグミも、その横に並ぶ。



「ヨッシャーーーーー!なんか知らんけど最高の気分だ!!」

「大勝利!!」



「「わはははははははははははは!!」」



 これで四人のチャンピオンが同時に誕生したわけか。

 メチャクチャ大変だったけど、何だかんだでスゲー楽しかったな!

 

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