コルクを漢字で書くと?

架空の歴史書を書いているのだが、ひとつ縛りを入れていて、人名・地名以外ではカタカナを使わないことにしている。

そこで困ったのが、コルクである。

主人公が仕える貴族の家を改築するときに、音に敏感な主のため、コルクを壁に敷きつめた書斎をつくる。

というエピソードを書いているのだが、手元の辞書ではコルクの漢字が見つからなかった。


それではと、インターネットを検索してみると、木栓が出て来た。

これはモクセンと読むのか、それともボクセンと読ませるのかとさらに調べると、コルクとしか読まないらしい。

江戸末期か明治初期ぐらいに、洋書を翻訳する中で生まれた漢字だろうかとまず思った。


それとも木乃伊ミイラのように、中国からもたらされた漢字かと思ったが、かの国では、軽硬木・栓皮・軽木・と書くらしい。

上の字の発音を調べてみたが、西洋から渡って来たコルクという言葉に、音の当て字をしたものではないようだ。


中国でコルクを木栓と書くようだから、それが日本に輸入されたと考えられるし、また、コルクの当て字として、明治期ぐらいに、日本から中国に輸入されたとも考えられる。



なお、栓皮櫟と書くと、中国ではアベマキ、コルクガシの意味になる。

コルクガシは南欧原産で東アジアでは取れないのに対して、アベマキは東アジアで取れる。

ここから推測するに、アベマキと同じコルクが取れるコルクガシを訳す時に、中国人はアベマキと一緒くたにしてしまったのであろうか。


ちなみに、アベマキは棈と書くが、これは日本だけで、中国では棈の漢字が、何の植物を指すかは不明。




手短に調べられる範囲でわかったこと、推測したことは以上である。

小説については、謎の植物「棈」で防音してもらうことにする。

二十万字予定で五万字しか書けていないので、年内に完成させることを考えると、細かいことには耳をふさがないとやっていけないのだ。


なお、コルクで壁を覆うのは、プルーストの故事から。



参照:

広辞苑、ブリタニカ国際大百科事典、漢字源

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