午後の怪獣【半裸/怪獣/黒板】
砂漠の真ん中に瓦礫が埋まっている。よく見るとこれは校舎の残骸だ。そこに、半裸の男性が立っていた。クラスメイトの真田くんだ。え、なんで半裸? などと思っていると、半裸の真田くんは「真子! 危ない! しゃがめ!!」と叫ぶ。
真田くんの声に身をかがめると、頭上を大きな物体が高速で掠めていった。そして起こる衝撃波に耳の奥と頭が潰されそうになり、バクバクと動悸が早くなった。
一体これはどういうこと? 半裸の真田くんは日に焼けて色黒い。そして、その背後には巨大な怪獣が立ち上がっていた。長いしっぽの生えたずしりとした恐竜のような怪獣だ。あまりの光景に私は腰を抜かしてへたりこんでしまった。
そして、真田くんはそれを見て慌ててこちらへ走り寄ってくる。陽光に晒された熱砂を踏みしめて、「早く逃げろ!!」と叫びながら。
あわわ……と何も言えなくなった私を真田くんは抱き抱えるとそのまま走って逃げる。
いわゆるお姫様だっこというやつにちょっぴり照れてしまいそうになるけれど、後ろから追いかける圧倒的な巨体が、私を現実へと引き戻す。
このままじゃ追いつかれる! そう確信した時、真田くんは「あった、これだ!」と砂に埋もれた校舎のそばに落ちていた黒板を拾い上げると、同じく落ちていたガラス片を拾って、それを大きく振りかぶる。
「えっ、ちょっと待っ……」言いかけた私を遮って、容赦なく真田くんは黒板を楽器に見立ててガラス片で引っ掻き始めて騒音を演奏した。
私も目を白黒させて絶叫したかったけれど、一番効果があったのは怪獣だ。
「ぎゃあああああああああああ」
怪獣は大きな断末魔の叫び声をあげて倒れ込むと、のたうち回り、そしてそのまま動かなくなった。
すごい! すごい! 喜びのあまり真田くんに抱きつこうとしたところ、世界が突然反転して……
***
「向上 真子さん、起きなさい。まだ授業は終わってませんよ」
「え? ひゃい。おひゃようございます」
寝ぼけている私をクラスメイトたちが笑う。周囲を見回すと、どうやら私は授業中にうたた寝をしていたらしい。
私を起こすため、先生がスマホで黒板を引っ掻く動画を耳元で流していたようだった。
え、てことは怪獣も半裸の真田くんも夢ってこと? 私の見た夢で真田くんが半裸って……あまりの妄想ぶりとお姫様抱っこをされていたという夢の中身に恥ずかしくなって顔を真っ赤にして俯く。
顔を突っ伏しながらもチラリと真田くんを見る。涼しげな顔で授業を聞いていたけれど、真田くんは私の視線に気づいたのかニコッと笑ったから、私はなんだか余計に恥ずかしくなってしまったのだった。
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