世界探偵サイド

第55話 世界探偵の決意


これは、またとないチャンスだ。


同盟を結んだ能力者二人から『タッグバトル開催』の知らせを受けた私は、そう思った。


しかし、時間は限られている。


「お二人とも聞いてください。このタッグバトルについてですが、開始前に仕掛けなければ我々に勝ち目はありません。できるなら戦いを避けるべく交渉をしたかったのですが、その時間もありません」


「ほんとに、やるの……?」


瞬間移動能力の少女が不安そうに言った。


「不本意ですが、手段を選ぶ余裕はありません。死にたくなければ覚悟を決めてください」


「……ウッス」


超長距離射撃の青年が小さく頷いた。

その表情は常に物憂げであるため、覚悟の程は伺えない。


瞬間移動能力の少女が涙目で言う。


「あたしだって死にたくない。でも、それ以上に、誰も殺したくない……!」


無理もない。

上位能力者とはいえ、まだ中学生くらいの子供だ。


こんな純粋な子供に殺人を強要することなどできないし、その必要もない。


「ルール上、お二人は能力者を攻撃することができませんから、殺る時は私が殺ります。お二人の役割はあくまでも後方支援ですので、どうか気負わないでください」


「でも、人殺しの手伝いなんでしょ……?」


「いいえ、殺すのは人ではありません」


「え……」


「神です」




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