（中森鈴子が、オーストラリア土産を持ってくる）

2023年1月。東京。T商事。海外システム部長室。

「部長。今、戻りました。夜行便だったので、今日は、羽田から、まっすぐ、出社しました」

「おかえりなさい」

「これ、お土産です」

といって、コアラのキーホルダーを、鈴木の机の上に置いた。

「ありがとう。それで、オーストラリアはどうだったかい」

「天気が良かったのは、ありがたかったですが、とっても、暑かったです。それと、ダマスカスってとっても便利ですね。オーストラリア・ドルは、少しだけもっていったんですが、結局、ダマスカスで、全部、済んでしまいました。そのコアラを買った街中のお土産屋さんが、空港にもお店を出していたので、お土産の受け取りは、機内で出来ました。荷物がなかったおかげで、手軽に動けました。タクシーも、シドニーのトラムも、ダマスカスでOKでした。トラムの料金って、区間や曜日で変わるでしょう。前に、海外旅行で、トラムを使ったときには、間違えていないかドキドキしましたが、今回は、何も考えなくてよかったので簡単でした。

それから、ちょっと、車酔いをして、お医者さんに、見てもらったんです。海外旅行保険にも入っていたんですが、その会社も、ダマスカスと提携していて、お医者さんで、私のダマスカスを見せたら、保険証も、支払いも、全て、ダマスカスが自動でやってくれました。

ダマスカスは旅行ガイドの会社とも連携しています。シドニーでは、スマホの旅行ガイドを使っていました。この旅行ガイドは、写真屋さんとも提携しています。ガイドを聞きながら写真を撮ると、ガイドの解説と写真のリンクがはられます。リンク・データと位置情報と画像解析から、何が写っているかを判断して、自動で、見出しと大まかなガイドの文章を付けて、その後に写真を見出しと日付とお天気のキャプションを付けて、並べてくれます。撮影地点の地図も自動で付けてくれます。観光地に行った時に、スマホの写真と一緒に、その場所の感想を音声で録音しておくと、それも、写真の下に、自動的に文字に変換して差し込んでくれます。今までもフォトブックのアプリはありましたが、これはレベルが違います。ボタン1つで、私の旅日記の写真集が出来るんです。仕上げに、余分な写真を削除して、文章を少し手直しすれば、10分くらいで、旅日記の写真集が出来上がります。こうして出来た写真集は、帰国後1週間以内なら、50%割引で、紙の写真集に印刷してもらえます。私は、シドニー空港で、時間があったので、旅日記の写真集を仕上げて、注文しました。写真集の受け取り場所に、羽田空港を指定したところ、入国して、直ぐに受け取ることが出来ました。これが、先ほど受け取ったその写真集です」

と言って、中森は、小型のアルバムを取り出した。