第26話 魔物の森①
私達が森へと足を踏み入れてから約1時間が経過した。
その間にも何度か魔物に遭遇したが、特に問題なく対処できる程度の魔物達だった。
『ねぇ、ポロどう思う?』
『うむ、かなり不気味だな。何か見張られている感がする』
『見張られている、ってどういう事?』
『それはわからんが……』
『でも、この辺の魔物達は皆倒してしまっているみたいよ』
サーチの魔法で探ってみても周りに反応はなかった。
「もうそろそろ、予定の地点だ気を引き締めてかかるように」
「「「はは!!」」」
進行を続けていると。
『マユミ、何か来る!!』
ポロに言われ
『凄い速さで来るよ! でも1匹だね!』
「皆さん前方約1キロの辺りから猛スピードでこちらにやってくる魔物がいます!」
私の声で一気に緊張感が高まる。
『来る!』
私達の目の前に現れたのは……。
『犬? いや……オオカミか!!』
大きさは中型犬位で、その毛並みは綺麗な純白をしていた。
「キレイ!」
『マユミ、奴はかなり高位な魔物だ注意しろよ!』
『私でもそれは分かる、かなり強い!!』
[ここに何をしに来た?]
脳内に直接流れてくる声。
その声は、ここに居る全ての人間に聞こえた様で皆が皆騒然としている。
「お前達、落ち着け、落ち着くのだ」
エリオノールさんが皆を静止させる。
「私達はこの森に偵察に来たんだ」
エリオノールさんが魔物に対して話し始める。
[ふむ、何を偵察しに来たのだ]
「少し前この森に入った人間がここの魔物に襲われたと聞いてやってきたのだ」
[あぁ〜、あの不貞な
「不貞とは、どういう事だ」
[あの者達は、やってくるなりこの神聖な森の木々を切ろうとしたのだ、それを阻止したに過ぎん]
「それは……」
[お前達は、自分達の領土に他の種族が入ってきて、許可もなく食料や住処を奪われたらどう思う!]
あのオオカミの言う事は正論だった。
その為、エリオノールさんもそれ以上返す言葉がでてこなかったのだ。
「何を
騎士団の団長がそう話し、騎士団を鼓舞する。
騎士達も、団長の声に同調し士気が高まっていく。
「目標は奴のみだ! かかれぇ〜!!」
突進していく騎士団達。
『マユミ、まずいぞ!』
「皆さん止まって下さい。危険です!!」
私の声は騎士達の威勢で掻き消され耳には入らなかった。
「くっ! あのバカ! 早まりおって!」
エリオノールさんが、団長に向かって
[ふん、お前達もあいつらと同じか!]
そう言うと、オオカミの魔物は遠吠えをし始めた。
「「「なんだ! 何が起こる!」」」
騎士達は、この辺一帯に響き渡る遠吠えに恐怖を覚える。
それもそのはずだ、あの遠吠えには威圧と恐怖を与える効果があったのだ。
「くっ! これは……」
皆が皆耳を塞ぎ、遠吠えが終わるのを待っている。
『この遠吠えは、何の為に!』
『マユミ! マズイぞ! 周りを見ろ!!』
ポロに言われサーチにて周辺を確認すると、今まで全く反応が無かった魔物の気配が至る所に現れ始める。
「なんて数だ! エリオノールさん! マズイです! 魔物の群れに囲まれています!」
「何だと! しかし、この遠吠えの中では……」
しばらくして、遠吠えが止まった。
[哀れな、精々頑張るのだ人間ども]
その後、そのオオカミは森の方へと帰っていった。
その際、一瞬だけ私の方を見た様に感じた。
しかし、今はそれどころではない。
周囲から、続々と魔物の群れが現れ襲いかかってくる。
騎士団、魔術師隊の人達は、突然の事で騒然としていたが、騎士団の団長を始めエリオノールさんの指揮の元少しづつ体制が整って来ていた。
一体一体はそれほど強い魔物はいない様だが、しかし数が多過ぎるのだ。
次から次へと現れる魔物に対して、次第に体力、魔力共に消耗してきていた。
「マズイな、これはキリがない! この状況で上位の魔物が来たら!」
エリオノールさんが、つぶやいた瞬間!
「ひっ! うわぁー!!」
悲鳴が聞こえた方を見ると、周囲が火の海になっていた。
「なんだ! 何が起こった!?」
エリオノールさんが叫ぶ。
「あいつは、あの魔物は……」
「ディノカイザー!!」
「ディノ? なに?」
「ディノカイザー、奴はランクにしてAクラスの魔物で巨大なトカゲみたいな物だ! 厄介なのはあの巨体から繰り出される攻撃と、今の様に火を吐く魔物だ」
エリオノールさんが私の疑問に答えてくれたが、かなり厄介な相手らしい!
ディノカイザーと呼ばれる魔物は見た目が、ティラノサウルスに似ていて体長は約3メートル程ある、特徴的はその尻尾にあった。
尻尾の先に何本も棘の様な物があり、明らかにあれを振り回して攻撃をするのだろう。
もしかしたら何らかの状態異常系の攻撃もあるかもしれない。
ディノカイザーがいきなり体を縮こませる様な動きをした。
「皆、奴が何かして来るぞ! 構えろ!!」
『マユミヤバい、尻尾を見ろ! 何らかの状態異常攻撃をしてくるぞ!』
ディノカイザーは縮こませた体を一気に解放すると尻尾の棘が今まで白色だった物が禍々しい黒色に変化していた。
そして、振り回された尻尾の棘からその黒色に染まった物体が私達の周囲へ着弾する。
またその一部が騎士や魔術師達にも着弾した。
着弾した者達から直ぐに悲鳴が上がったが、物の数秒で体がドロドロに溶けていったのだ。
「「「うわぁー」」」
「……毒か!! それもかなり強力な!!」
エリオノールさんが叫ぶ。
『マユミ、あいつのあの毒は、猛毒の中でもかなり上位の物だ、それに何かあの毒は少し違う!』
『毒が少し違う!? どういう……。確かにこの毒、独特な
「マズイ!!!」
叫んだ時だった! ディノカイザーは既に口を大きく開いていて、その奥には炎が見えたのだ。
『ダメだ……!! 間に合わない!!!』
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