第21話 決着
「何やら、街の方が騒がしいな。ふふふ」
「何をしたのだ?」
「なぁ〜に、裏にもう10体のワイバーンを忍ばせていただけだ!」
「何?」
「もうそろそろ、あの街を終わりだ!」
すると、街の上空に黒く分厚い雲が現れた。
「始まるぞ、終焉が!」
「貴様!」
ランドロスはエルダー・ドラゴンに向けブレスをするが、相手もまた同じようにブレスで応戦する。
「ちっ!!」
「昔のままの私ではありませんよ。貴方が居ない間も私は強くなっていったのですから」
「それにしても、火の手があまり上がりませんね!」
「お前は我の主人を軽く見過ぎだ」
「なに? たかが人間だろうが」
「人間だろうと、そんなのは関係ない。我主人は最強なのだ」
その直後、街の真ん中より一筋の光が上空へと伸び、今までかかっていた分厚い雲が一瞬にしてかき消されたのだ。
「なんだ、あれは!? 何が起こっている!」
「ふははは、
「何がおかしい!?」
「お前達の負けだ!」
「ああ? 何を戯言を!」
「あれはな、我の古い友人でな。奴が出てきたって事は、この戦いはもう決着したも、同然だ」
「はぁ! 何を言って……ま、まさか……」
「ああ! やっと理解したか! でも、あの方は今はもう……」
「そうだな、もう居ない! 我の同様この世には居ないが、ある場所にいるのだ」
「ある場所?」
「そうだ、我の主人! いや、〝我々〟の主人だ」
『……爺が出てきた事で街は守られたが! 主人にあの数を同時にとなると……くっ!』
ランドロスは知っていた、あの光はおそらく〝
亀甲神の能力は全ての攻撃の無効化だ、しかしあれを見るに、その能力は街にのみはたらいている様に見える。
言い換えれば、人間に対しての攻撃は通ると言うことになる。
「余所見をする余裕があるのか!?」
エルダー・ドラゴンの攻撃が直撃し、ランドロスは地面へと叩き落とされる。
『向こうを気にする余裕は無いか』
「流石に頑丈ですね!」
「こんなものかすり傷にもならんわ」
『しかし、どうすれば……』
『龍神よ、聞こえるかの?』
『その声は……』
『ほっほっほ、久しいの龍神よ』
『お前から話しかけてくるなんて珍しいな』
『な〜に、我が
『我が主人じゃと……』
『なんじゃ? 我が主人には変わりあるまい!』
『あの方は〝我の〟主人じゃ!』
『ほっほっほ、何を言うておる! 鷲も今はあの方の眷属じゃぞ、それとも何か? ヤキモチかえ?』
『ふん!』
『それとな、言い忘れたが〝堕蛇神〟が主人に興味を示し始めておるぞ! はよーせんと
『なにぃ〜!? あの蛇神! 奴には絶対主人は渡さぬ。爺、お前にも渡さぬぞ!』
『ほっほっほ、どうかのぉ? 我は亀じゃからな、小さき亀を見たら主人様も喜んでくれるかもしれんぞ』
『ふん、
『まぁせいぜい頑張るのじゃ、こっちは問題ない!』
「ふははは、そうかあやつがの」
「何がおかしいのだ!」
「いや、すまんな。
「何?」
「残念だったな、もう完全にお前らの負けだ!! お前らの勝機は一切なくなったぞ」
「
エルダー・ドラゴンが言い切る前にランドロスが物凄い速さで近づきその強靭な尻尾で攻撃を繰り出した。
「がはっ!」
エルダー・ドラゴンが数百メートル先まで吹っ飛んでいった。
「我はお前に謝らなければならない事がある。あの後あの戦いの後〝我ら〟はこの世界から消えた! それは、我らの意思ではない。そうさせられたのだ」
「何を今更!」
「我ら五神は〝あの方〟の怒りを買ったのだ。その代償として、我らは消され気づいた時には〝神皇種〟として君臨していたのだ」
「そんな……そんな事を言われて、納得がいくと思うのか!? あの後から我らの生活は大きく変わったのだ……」
あの戦いの後、ランドロス含め世界から五つの王、支配者が消え去った。
あの戦いに参加しなかった、天空の王までもだ。
王が居なくなった世界は瞬く間に変化を繰り返した。
5つあった世界は統一され、広大な大陸となった。
そして、我ら龍種を含め古の時代を生きた者達はその力を失い、ただの竜へと、変化したのだ。
そして、いつしかこの世界に人類という種類が出てきてこの世界の新たなる存在となった。
「我らは偉大な龍種からただの竜へと退化し、人間共に狩られる存在へと成り下がったのだ。その屈辱が貴方にはわかるまい! 私が龍へとなってからも、配下は皆竜のままだ。そして今や同胞の数も減ってきている。そんな時だ貴方様の気配を感じたのは! これは何かの兆しかと感じたのだ。しかし来てみれば貴方様はあの下等な人間の眷属となり我が同胞にまで手をかけているではないか」
「すまぬ………」
「そんな言葉で、納得がいくものかぁー」
エルダー・ドラゴンが尻尾にて攻撃する。
落下しているランドロス目掛け火炎弾を数発放った。
「お前のせいだ、お前達のせいだー」
エルダー・ドラゴンは再度数発の火炎弾を解き放った。
「あなたの気持ちは分からなくはない、分からなくはないけどこんなやり方では何も変わらないよ」
「……誰だ!?」
エルダー・ドラゴンは火炎弾を放った辺りから魔法の発動を感じ、警戒する。
そして、そこから現れたのは1人の人間だった。
「お前は、誰なんだ!?」
「私はマユミ、ここにいる龍神〝達〟の主人です」
「なに? お前があの方の主人だと?」
「主人、何故ここに!?」
「向こうはもう大丈夫! 全て片付けたから」
「全てだと?」
「そうよ、私が街に向けられた脅威を全て排除したわ。恨むなら私を恨みなさい」
「貴様まぁー」
「主人〜!!」
エルダー・ドラゴンがマユミに向かって突っ込んでくる。
しかし、その突進は届く事はなかった。
「ほっほっほ、エルダー・ドラゴンよ。我が主人に何か用かな?」
「その声は……〝亀甲神〟様か!?」
「左様、今はマユミ殿の眷属じゃがの!」
「何故、何故お止めになるのです」
「そんなもの簡単じゃ、我が主人を守るためじゃわい」
「くっ!」
「もうやめるのじゃエルダー・ドラゴンよ」
「しかし!」
「もうお前を守る配下はここには居らん。それに主人はお前を倒す事を本望ではないと考えておられる。逆にマユミ殿はお前さんらを助けたいと話しておられる。そうでしたな?」
「その通りです。エルダー・ドラゴンさん、もうやめましょう」
「エルダー・ドラゴンよ、我も主人同様お前を倒したくない。我が消えてからこの長い間龍種を、束ね守ってきてくれた。それが嬉しいのだ、我はもうお前達の元へ戻る事はできぬ、じゃが主人がいればこうして会う事は出来るのだ。我は主人に頼むつもりだ、〝お前の同胞〟も我同様に守ってもらえる様にと……」
ランドロスの最後の言葉が効いたのがエルダー・ドラゴンはこの地から去っていった。
最後に……
「マユミとやら、よろしく頼む! 私達の王を、そして我々を……」
「もちろんよ!!」
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