第2話 異世界へ

『ようやく、出会えた! 我が主人……。もう少し、もう少しです。お会い出来る日を楽しみにしておりますぞ』



「はっ!!!」



 脳内に響いた声のような音、私の頭は一気に覚醒へと導かれた。



「どこ!! ここ!?」 



 目の前に広がるは、狭い家の中ではなくどこまでも続く広大な草原だった。 



 その見たこともない美しい景色に見惚れていると。


「ねゃーニャンて〜」「アランタマン」


 何か聞き慣れない声!? のような音が聞こえてきた。

『猫? アランタマン? なに?』


「おふ、アランタマンましこまぬす」

 

『またあの声だ……。どこからだろう……』

 周りを見渡すと、少し離れた所に1人の男性と小さな女の子がいて、さらにその近くには2メートル程あろうかという大きな猪の様な生き物が居たのだ。


『でっか! 何あれ、猪? それにしてもデカすぎない?』

 まるで、【も○○け○】に出てきそうな……


「オギャーオー」


「……鳴き声変ね!」


 その体には似ても似つかないその鳴き声に思わず声が出る。

「どうしよう、あんなのに見つかったらヤバイよねぇ……

 でも、あの人達を放っておくのも……」


 ……って、「あっ! 目が合った!」


 男性と目が合ってしまった……。


「マニラ? ままのすけ」


『明らかに何か言ってる、何を言ってるかさっぱりだけど、でもこれだけはわかる』


 あれは完全に助けを求めている顔だった。

 そして男性は女の子と一緒に、こっちに走ってきた。

 もちろんその後にあの猪付きで!


『えぇーなんでこっちに来んのよ』


「オギャーオー、オギャーオー」


『ぶふっ、やめてその鳴き声……って言うてる場合か!』


「わぁーマジでこっちに来ないでぇー……ってぇー……え?」

 男性と女の子が走っている、それはよしとしよう、その後ろの猪だが……


「……遅っ!!」


 凄い怒っている猪が猛ダッシュしていると思いきや、あれは……。


「歩いてるね」


 しばらくして、男性と女の子が私の元にやってきた。

「にゃうち、まにらら」と男性。

「はみるのだ」と女の子。

『さっぱりわからん』

 うん? っと首を傾げると、男性も女の子も一緒に首を傾げる。

 しばらくして猪が目の前まで、走って……いや歩いてきた。

 男性と女の子は私の後ろに隠れて、「たきなみは、くらぶ」と言っている。


「うん〜、もしかして私が退治しろと? この猪を?」


 ちなみにジェスチャーで、伝えてみると、うん、うん、と頷かれた。

 無理無理とジェスチャーをしてみるが、向こうも一緒で無理無理と返してくる。


『倒すったってどうすれば良いのよ、戦い方なんて知らないし、ってかそもそも武器がないじゃん』


 幸いな事にあの猪は足が遅い、近づかれても少し走って逃げたらしばらくの間時間を稼げる。

 時間は稼げるが、どうすれば良いんだ?

 私、男性、そして女の子は猪と一定の距離を保ちながら逃げ続けていた。

「何か武器があればなぁ、剣? いやいや剣なんて振り回さないしな、槍? うん〜あんな長いのは使いきれそうにない、あっそうだ弓ならいけるかも」

 高校の時弓道部だった事を思い出した。


『でもなぁ〜、下手くそだったしなぁ〜、って考えたところで弓も矢も無いのにどうしろと?』


「んぁーどうしたら良いのよぉー」


 草原に響く私の叫び、だがその直後私を中心に光が溢れる。

『暖かい光』

 私はその光に身を任せると自然と願っていた。

『何か武器を下さい』

 すると、今まで私を中心に溢れていた光が手のひらに集約され消えていく、そして光と引き換えに一本の弓が握られていた。

「え? どういう事?」

 隣にいた男性と女の子は目を丸くして驚いていた。

 しかしすぐに、それは期待へと表情を変える。

「え? えぇー! 無理無理無理だよ〜」

 2人は私にこれでもかってほど期待の目を向けている。

 

「はぁ〜、マジかぁ〜」

「もうどうなっても知らないからね」


 私は仕方なく猪へと向き直るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る