二重三重の検問
「二重三重の検問。びくともしないバリケード、くわえて厳重なボディチェックとバイオセンサーによる徹底的なスキャン。それでも犯人は現れた」
苦み走った顔の老刑事が現場見取り図にバツ印を書き加えていく。標的とされた治水権管理庁の周辺は文字通り水も漏らさぬ警戒網が敷かれているが、それを嘲笑うかのようにテロ攻撃が相次いだ。
装備を一新して背水の陣で臨んだものの、あろうことか今度は庁舎の目と鼻の先で事件が起きた。無辜の血が流され、貴重な水分が失われた。
「いったい、どこから湧いたんだ! ああっ?!」
ボードを殴った刑事はいちいち感情的になれるほど若かった。そのみずみずしさを老刑事は懐かしく思う。そして、かつて先輩から授かった言葉を繰り返した。
「もう一度、根本から洗い直すんだ。徹底的にだ」
「4回もやったじゃないすか。そしてこのザマですよ」
若造は口角泡を飛ばして訴える。
「じゃあ、水野。お前の目が曇っているんだ。顔を洗ってこい」
老刑事は節水と書かれたドアを指した。
「流水許可は出していただけるんでしょうね?」
「俺の枠を使え。咎められたら沢原の命令だと言え」
そう言ってやると水野は扉の向こうへ消えた。
沢原は脂ぎった白髪を掻きむしった。窓の外はカラッとした快晴だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます