最終

 外は砂嵐が巻き起こっている。


 重心を下げ、体を釣り上げられないように注意しながらビルにあるべき箱へと向かう。目に砂が入らぬように腕を顔に当てると目の前は見えなくなってしまう、それでも、導かれる。


 彼らは、彼女らは、何を望んだのだろうか。私に無責任な望みを託して何を変えようとしたのか。這々の体で辿り着いたビルが、私の……。

 きっと私は同じ事を望んだ。くそったれな世界を変えようと、此処まで形のない責任を背負って登ったのだろう。美談か?


 何が形のない責任だ。

 あいつは憎んで死んでいった。


 同じ事を望んだ?

 ルンは俺が殺した。


 お前を連れて行きたくない。

 いや、劣情に負けた。


 私は何故ここにいる?


 足元を見ると、“ビル”には小さすぎるストラップが落ちていた。

 狂愛しく懐かしい。割れたグラス、燃え掛けの台帳。私の仕掛けたクソッタレな世界。遥か高みに免罪符を求めたか、望んでなどいない。停滞が恐ろしい、砂丘に埋もれる金槌を拾い上げるのを拒んだからか。


 ただ前に、ただ進むしかない。


 導いてくれ。





『私はここで死ぬのですね。結局のところ、私は私の理想を見ることはできなかった。いいや、理想を知らなかったんです。私はこの星を見下しにやってきただけでした。あの表紙に取り憑かれ、人々を不幸に貶める悪魔と成り果てました。最後に言い残すこと?ああ、貴方の瞳は今まで見てきた誰よりも残酷です。きっと思い悩んできたんでしょう。ただ、どんなに酷かろうと、救いは必ずあります』


『お前のいる組織ってやつは大変だな。吊り下げられていつ糸が切られるかわからない。その足だろ?ははっ、分かるってんだ。何年人を見て欺いてきたか知ってるか?まぁ話しても何だ、ただ最後にお願いがあるんだよ。あの嬢ちゃんと一緒に、このクソッタレな世界を壊してくれよ。あんたはそれでここまできたんだろ?』


『じゃあこの先どうしようかな、国がこの惨状を見逃すとは思えないし、打開する材料もない。時代の趨勢を見誤ったこの星には未来的なものは何も無いね。有るのは停滞だけだよ。楽に星に入れないし出れない以上はそうなるしかなかったんだろうけど、如何にかしたいよね。ねっ、頼むよ』


『戦局放送です。解放軍がザッに攻撃を開始、反撃はザッしておりザザッ……ネーハ・ガルシアはザッを発表しましたが全てザッです。ザザザザッこちら解放軍、我々は旧世界の支配者から全てを解放する。繰りえザザッこれは解放である、革命である。ネーハ・ガルシア』

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