第11章 新町通の違和感【1】

 それから2日後。俺は大急ぎで自転車を飛ばしていた。

仕事を終えて帰る支度を整えていたところ、スマホに着信が来た。急いで取ると、中央病院の大春おおはる医師からで、「さくらの容態が好転して、個室に移った。5分だけなら会わせてあげられる」とのことだった。

 とは言え、今時分からだと面会時刻終了まで2時間半しかない。それで俺はASAPで自転車を漕いでいるのだ。

……さくら……

俺の脳裏にはこの数日の夢と現実が浮かんでは消えていた。

しかし、想うことはただひとつ。

……最悪の白昼夢を現実にはさせない!……

 夕暮れ時の薄闇の中を突っ走る俺の前に、黒々とした空間が見えてきた。

高空線の高架橋だ。

 数日前は、高架橋の下を出入りする中で、幾度か望まぬ白昼夢に飛び込んでしまった。

……もう、あんな白昼夢には惑わされない! 待ってろよ、さくら……

意を決して俺は高架下の暗闇に飛び込んだ。

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