第10章 さくらとの出会い 【13】

 いつもより早く家を出たので、約束の8時40分には少し早いくらいに、待ち合わせ場所の「五色田ごしきだ公園の東側の通りの真ん中辺り」に辿り着いた。辿り着いて初めて、先輩がこの場所を指定した理由が分かった。ちょうど公園への出入り口があったのだ。

……そうか。先輩、公園ショートカットしてくるつもりだな……

先輩の意図に気付いた俺は、公園のほうを向いて、待つことにした。

 そうして待つこと2、3分足らず。公園内の道を小走りに歩く白石しらいし先輩の姿が見えた。

「先輩! おはようございます!」俺は思わず手を挙げた。

「あ。西浦くん、おはよう!」と白石先輩は手を振り返してくれる。

「ごめんね、西浦にしうらくん。わざわざ朝から呼び付けて。高空たかぞら駅の通り魔の犯人は捕まったんだから、心配いらないのに。うちの母親が『昨日約束したんなら、駅まで送ってもらえば良いでしょう』なんて言って譲らなくて。早起きさせちゃったよね?」

「いえいえ。元々通り魔が捕まってない想定で早起きしたので、むしろ『タイミングが良かった』と言うか……。とりあえず、俺に迷惑はかかってないので、安心してください」

「なら良かった。それじゃあ、駅まで行こうか」

「ですね。行きましょう」

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