第10章 さくらとの出会い 【2】

 俺がさくらと初めて出会ったのは、大学時代のバイト先だった。

俺は大学時代、大学から1駅隣の駅前にある、個人経営の雑貨店で品出しのアルバイトをしていた。そこで俺のメンターとなったのが、さくらだった。

さくらは、バイト先のある駅を最寄りにしている大学の生徒だった。

 バイト先の先輩と後輩と言う変わり映えのしない関係が数ヶ月続いたある日、事件が起こった。

 なんと、俺の自宅の最寄り駅である高空たかぞら駅の駅前商店街で通り魔事件があり、刃物を持った犯人が逃走中なのだ、という。その一報を家族からのSNSで受け取り、俺は愕然とした。

……男だからって、通り魔に襲われねぇ保証はねぇじゃねぇか……。

 バイト先の雑貨店は、高空駅を通る沿線に当たる。運が悪いと、通り魔犯がこちらの方面に逃げている可能性も考えられる。

……よっぽど気を付けて帰るっきゃないか……

俺がそんなことを思っていると、事件を知ったバイト先の店長が、さくらと一緒に俺の所へやってきた。

西浦にしうらくん、君、今日、定時上がりだったよね?」

「はい。そのつもりですが?」

「最寄りは高空駅だったよね?」

「ええ。」

「なら、ちょうど良かった。白石しらいしさんも最寄りが高空駅だから、途中まででも良いから、一緒に帰ってあげて欲しいんだけど……」

「はいっ⁉︎ 俺は別に構いませんけど、白石先輩はどうなんですか?」

「西浦くんも高空なんだ、って言うのはびっくりしたけど、男の子が道中一緒なら、怖くないからありがたいかな」

「じゃあ、決まりだね。西浦くん、白石さんの護衛頼んだよ」

そう言うと、店長は事務所の奥へと戻って行った。

……ちょっと待て。今さらっと、バイト先の先輩のSPをしろ、という命を仰せ遣ったような……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る