第93話 三獣魔の力
「《ブラックブザートラップ》……ッ!」
E Xスキルを発動するティオ。
相手は強大な三獣魔が一柱、その力は七魔族を遥かに上回るはずだ。
《ブラックブザートラップ》は奥の手ではあるが発動しておくべきと、ティオは判断したのだ。
スキルの効果でティオを中心に黒い霧が立ち込める。
『この黒い霧……効果はわからぬが俺様たちに直接的な害はないようだな?』
直感か、あるいは何らかの能力によるものか……ヨルガムンドがそのことを見抜く。
(……なんていう魔力量だ)
《ブラックブザートラップ》の効果で、ヨルガムンドの体から漏れる魔力を感知したティオ。体から漏れているだけの魔力だというのに、その圧倒的な量に内心驚く。
『どんなスキルであろうと問題ない、貴様たちごと消し飛ばしてくれるッ!』
そう言って息を大きく吸い込むヨルガムンド。
「みんなぼくの後ろに隠れろ! 《ブラックリパルサー》!!」
ヨルガムンドの動き、そしてその魔力の流れを感知したティオが叫ぶ。
次の瞬間――
ゴオォォォッッッッ!!
凄まじい熱量を持ったブレスがヨルガムンド顎門から解き放たれた。
「くっ……!」
「なんて大規模なブレス攻撃……っ」
「これじゃあまともに攻撃もできないよ!」
漆黒の魔力盾を展開し敵のブレス攻撃をに耐えるティオの背後で、アイラたちが冷や汗を流す。
ヨルガムンドのブレス、その言葉の通りティオの展開した《ブラックブザートラップ》を消し飛ばすような勢い、そして範囲を誇る攻撃だ。
『クカカカ! 先ほどまでの威勢はどうしたのじゃ!』
『カハハハ! 我らも援護いたします、ヨルガムンド様!』
高笑いしながらヨルガムンドの両サイドから魔力鏡を展開するバルパトスとアガレス。
魔力鏡の中から禍々しい紫の色をした魔力の槍が弧を描き飛び出しティオたちの頭上から襲う。
「ブレス攻撃でティオが動けないからって!」
「調子に乗らないでよね!」
「ティオ、二体の攻撃は私たちが防ぎます!」
アイラは聖剣を振り、エイラはテンペストキマイラを使役し、ラティナスは魔導書でスキルを展開し、バルパトスとアガレスの猛攻を捌いていく。
【ティオ殿!】
「ああ、このままやられてたまるか! 《ブラックジャベリン》――ッ!」
今も続くヨルガムンドのブレス攻撃を魔力の盾で耐えながらE Xスキルを発動するティオ。
頭上に三本、漆黒の魔槍が顕現し目にも止まらぬ速度でそれぞれ的に向けて飛んでいく。
『ゲハハハ! 何をしようと無駄だァ!!』
ブレスを吐くのを止め愉快そうに笑うヨルガムンド。
するとその体に纏った鎖が伸び――パァンッッ!!
そんな音を立てて《ブラックジャベリン》と衝突、したかと思えば《ブラックジャベリン》を消し飛ばしてしまったではないか。
『おお! さすがはヨルガムンド様!』
『素晴らしきお力ですじゃ!』
アガレスとバルパトスが興奮した声を上げる。
「これは……」
【ティオ殿の攻撃を無効化するとは、厄介だな】
ティオの漏らした声に反応を示すベヒーモス。
まさかティオの得意としその中でも強力なE Xスキル《ブラックジャベリン》をこれほどまでに意図も容易く無効化する敵が現れようとは。
『ゲハハ……さぁ、もう一度いくぞ!!』
そう言って再び大きく息を吸い込むヨルガムンド。
その一瞬の隙を突きティオが攻撃を仕掛けることは可能だ。
しかしそれをしたところで敵のブレスは吐き出され尋常ではないダメージを負うことが理解できてしまう。
それ故にティオは――
「《ブラックリパルサー》……!」
再び魔力の盾を発動せざるを得ない。
「くっ、このままじゃ……!」
「ジリ貧だよ〜!!」
ティオの背後で敵の攻撃を凌ぎながら声を漏らすラティナスとエイラ。
アイラは何も言わないものの、その表情には焦燥の色が浮かんでいる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます