第90話 魔力の鏡
迷宮を奥へと進むことしばらく――
「この気配は……」
その場でピタリと歩みを止め、先を見据えるティオ。
すると暗がりの中から……
『人間か、まさかここまで早く現れるとは』
『三獣魔が一柱――《ヨルガムンド》様の復活まであと少しだというのにのう……』
そんな声とともに二体の魔族が現れた。
「ティオ、この二体……」
「うん、恐らく上位の――恐らく七魔族かな?」
目の前の魔族二体に視線を向けながらやり取りを交わすアイラとティオ。
二人の声を聞き、魔族が不気味な笑みを浮かべ――
『ほう、気配で我らの正体を看破するか。その通り、私は七魔族が一柱〝アガレス〟、そして……』
『儂の名は〝バルパトス〟、同じく七魔族が一柱じゃ』
やはり……
以前に七魔族が一柱ヴァサーゴと戦った時と同じようなプレッシャーを目の前の二体からティオたちは感じていた。
三獣魔の復活、その側にはもしかしたら七魔族がいるかも知れない、そうティオたちは考えてもいた。しかしまさか同時に二体も現れようとは。
「いくわよ、エイル、ラティナス」
そう言って聖剣 《アロンダイト》を抜くアイラ。
「了解だよ、アイラ様!」
「ティオたちに授かった力で挑ませていただきます……!」
アイラの声に応え、エイルは使い魔であるテンペストキマイラを呼び出し、ラティナスは魔導書を開く。
『ほう……?』
『ありゃ聖剣か、なるほど勇者がいるともなれば氾濫したモンスターどもを掻い潜ってここに辿り着くことも可能……なのか?』
アイラの聖剣を見てそれぞれ声を漏らすバルパトスとアガレス。
しかしその表情には疑問の色が浮かんでいる。
それもそうだろう、いくら勇者がいるとはいえこの人数でモンスターの大群を捌ききれるとは思えないからだ。
「アイリスさん、リリたちと後退しつつ背後の警戒を」
「了解です、ティオ様」
静かにアイリスへと指示を出すティオ。
七魔族が現れたとなればここで彼女たちの役目は終わりだ。
あとは戦いに巻き込まれない範囲に後退してもらい、いざとなれば撤退させるつもりである。
横目にそれを見届けたところでアイラたちが――
「喰らいなさい、《セイクリッドレイン》!」
「やっちゃえ、テンペストキマイラ! 《ライトニングハウリング》!」
「焼き尽くします、《ディバインフレイム》!」
それぞれ神聖属性の雨、雷属性の咆哮、そして圧縮した炎の魔力をアガレスとバルパトスに向かって放つ。ティオとベルゼビュートのバフを受けそれぞれ漆黒の力を帯びている。
『クカカカカ! 無駄じゃ、《ギャラルミラー》発動!』
アイラたちの攻撃に飲み込まれる直前、バルパトスがスキルを使う。
目の前に巨大な魔力の鏡のようなものが現れ、アイラたちの攻撃が全て吸収されてしまったではないか。
「……!?」
「そんな!」
「私たちの攻撃が……!」
その全てが上位スキル、それもティオたちのバフがかかっていたにも関わらず無効化された事実にアイラたちが驚愕の声を漏らす。
『カハハハ! それだけではないぞ! 喰らうがいい、《ギャラルバスター》!!』
笑い声を上げながらスキルを発動するアガレス。
するとどうだろうか、バルパトス同様に目の前に魔力の鏡が現れたかと思えば、その中から凄まじいエネルギー攻撃が飛び出してきた。
「な!?」
驚愕のあまり目を見開くアイラ、その反応も当然だ。
なぜならば、魔力の鏡――《ギャラルバスター》の中から飛び出した攻撃はアイラたちが放った《セイクリッドレイン》、《ライトニングハウリング》、そして《ディバインフレイム》だったのだから。
「《ブラックリパルサー》!」
後方から声を上げる高らかにその名を叫ぶティオ。
アイラたちの前に漆黒の巨大な魔力盾が展開し、敵の攻撃を全て防ぐことに成功する。
E Xスキル《ブラックリパルサー》――
オーギュストの戦いを経てティオが新たに手に入れた防御系のE Xスキルだ。
「ティオ、助かりました!」
「それにしても攻撃を吸収して放ってくるなんて厄介だよ〜!」
ティオに礼言うラティナス。そして敵が発動したスキルを理解し、その厄介さに「むむむ!」と声を上げるエイル。
「恐らく放出系のスキルは全て吸収されると思った方がいいわね、それなら……」
そう言って、アイラが聖剣を手に飛び出した。
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