第77話 インペリアル

「これは……すごいな」


 インペリアルの中に入り、思わず声を漏らすティオ。


 ただでさえ巨大なインペリアルではあったが、中には想像を超える広大な空間が広がっていた。

 まるで城のエントランスを思わせるかのような、煌びやかな内装だ。


「驚いたであろう、我が主よ。この空間は転生前のあなた様の黒魔術を応用して作られている。ここ以外にも居室や浴場、倉庫……生活や戦闘に必要な施設がいくつも凝縮されているのだ」

「それは……本当にすごいな……」

「ククク、本当にすごいのはあなた様なのだがな」


 ティオの反応を見て、少々苦笑するサヤ。

 彼の話によると、居室などから外の景色が見えるような仕組みがされており、有事の際には全方位を網羅した外の様子がこのエントランスの頭上に映し出されるようになっているとのことだ。


「それにしても……」

「ティオさん、伯爵様にはどうやって説明するの?」


 各施設を回って見ている途中で、ユリとスズがティオに問いかけてくる。


「そうだ、どうやって説明しよう……さすがに全部そのまま伝えるわけにもいかないですし……」


 そう言って、頭をポリポリと書きながら思案するティオ。

 アンデッドの軍勢が配下に加わった、魔導列車が手に入った、それはティオが魔導王シュヴァルツの転生体だからだ……全て突拍子もない話だし、何よりアンデッドを配下にしたというところが問題である。


 と、ここで――


「ふむ……では何もなかったことにすれば良いのではないか?」


 サヤがティオに向かって話しかけてくる。


「何もなかったことに……とはどういうこと?」

「外の隠しエリアは転生前のあなた様……いや、ティオ殿と呼ばせてもらおう。転生前のティオ殿が黒魔術を応用して作った空間であり、我らでいつでも消してしまうことが可能だ。我らと魔導列車インペリアルを収納魔法で回収してもらえばそれで良かろう」

「そ、そんなことができるのか……なるほど、それなら伯爵様やギルドには、隠しエリア自体が消えていたと報告できるかな?」


 サヤとやり取りを交わしながら、アイリスたちの方へと視線をやるティオ。


 それに頷きながらアイリスとベルゼビュートも「そうですね、迷宮と化した遺跡は変化することもありますし」「実際に隠しエリアへの道がなくなっているのを見てもらえば納得すると思うわ」と、ティオに答える。


「よし、であればある程度インペリアルの中を見終わったら我らの回収を頼む」

「了解だよ、サヤ」


 そんな感じで話がまとまると、ティオたちはインペリアルの中の探索を続ける。

 居室はまるで高級ホテルのスウィートなのではないかという優雅で豪華な様であり、浴室は大浴場がいくつも用意してあった、他にも食堂、アンデッドたちの武器が収納してある巨大格納庫などなど、全てを見ることはできなかったがとんでも空間であった。


「よし、それじゃあみんなを回収するね」


 インペリアルの外に出たところで、ティオが杖を片手に言う。


「ああ、頼む」


 ティオの言葉に頷くサヤ。

 それに続きアンデッドの軍勢が一斉に跪く。


「《ブラックストレージ》――」


 ティオが黒魔術を発動する。

 サヤを始めとしたアンデッド、そして魔導列車インペリアルまでもが黒い霧に包まれ……その姿を消した。


「ほ、本当に全部回収しちゃった……」

「やはりとんでもないな……」


 目の前で起きたことに改めて度肝を抜かれるユリとスズ。

 ダリアはどこか疲れた表情を浮かべ、アイリスとベルゼビュートは得意顔、リリスとフェリスははしゃぎすぎたのか少しおねむな様子だ。

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