第67話 執着
その声を聞き、彼の方を見るティオたち。
するとオーギュストの手の中には七魔族の魂の結晶が――
「オーギュストさん……?」
不気味な笑みを浮かべるオーギュストに、ティオが話しかける。
対しオーギュストは――
「ティオ、ここからが〝本当の決勝戦〟だ……ッッ!!」
そう言って、七魔族の魂を自分の胸部に当てた。
そのまま、ズルリッ……! と音を立て、七魔族の魂がオーギュストの胸部に飲み込まれた。
「な!?」
わけのわからない言葉、そして突然の出来事にティオが声を漏らした――その刹那、オーギュストの体が禍々しい紫の光を放ち始めた。
「これは……マズイわね」
「ベル、どういうこと!?」
「マスター、オーギュストは封印を解かれた七魔族の魂を取り込んでしまったわ。つまり……」
ベルゼビュートがそこまで言ったところで――
『ククク……素晴らしいパワーだッッ!』
血走った目で、オーギュストが叫ぶ。
その体には毒々しい紫の幾何学的な紋章がいくつも浮かび、全身の筋肉がありえないほどに膨らんでいる。
「オーギュストさん、一体何を? それに本当の決勝戦とはどういう意味ですか?」
『見ての通りだ、ティオ。俺は七魔族の魂を取り込み強化された。そしてこの体で、武闘大会でのケリをつける……ッッ!!』
そう言って、獰猛な笑みを浮かべながら大剣を構えるオーギュスト。
「武闘大会でのケリ……まさかぼくに負けたことを?」
『その通りだ! あの大会での優勝者は俺でなければならない! だからこそ、俺を打ち破ったお前を殺すッッ!!』
ティオの質問に叫び声で答えると、オーギュストはその場から飛び出し大剣を振り払ってきた。
「みんな下がれ!」
あまりのスピード、そして威力に、ティオは仲間たちに距離を取るように指示を出す。
あんな攻撃を喰らっては、リリスやフェリスはひとたまりもないからだ。
『いいぞ! 一対一だ! これが本当の決勝戦だ……ッ!!』
血走った目を見開き、笑い声を上げるオーギュスト。
七魔族の魂を秘めた彼が一体どんな強さを秘めているかは未知数、しかしやるしかない。
そう判断し、ティオは剣と盾を手放した。
『……いったいどういうつもりだ?』
訝しげ表情でティオを見るオーギュスト。
それに対し、ティオは……
「こういうつもりだ!」
そう言って、《ブラックストレージ》から長杖を取り出し――
「《ブラックバレット》!!」
E Xスキルの一つを発動。
幾十もの漆黒の魔弾がオーギュストに襲いかかる。
『魔法スキルだと!?』
驚愕の声を漏らすオーギュスト。
そのままその場から大きくサイドステップする――が、魔弾の半数を喰らうことになる。
『グゥゥゥゥ!? なんだこれは! 生命力が奪われていくッッ!?』
苦しげな声を漏らし、オーギュストがティオを睨みつける。
ティオはリリスとフェリスの言葉を聞き、オーギュストに警戒心を抱いていた。
だからこそ、ここまでの戦いでE Xスキルを封印し、本来の力を隠していたのだ。
しかし――
(どういうことだ? アレだけ攻撃を喰らったのに戦闘不能に陥らないだと?)
ティオはそんな疑問を覚える。
「マスター、恐らくヤツは七魔族の魂を取り込んだばかりで、エネルギーが暴走状態になっている可能性が高いわ!」
「なるほど、一時的に桁違いの生命力を手に入れている……ということか」
後ろから聞こえてきたベルゼビュートの言葉に納得するティオ。
その言葉を聞き、オーギュストが勝ち誇った笑みを浮かべながら――
『お前の隠し持っていた力は凄まじいが、それも俺の前では無力だ。さぁ、お前を倒して……俺が優勝者だッ!!』
そう叫んだオーギュストの体がその場から掻き消えた。
そして――
『もらった!!』
ティオの後ろからそんな声が響く。
ハッと振り返るティオ。
その瞳に大剣を振り上げてくるオーギュストの姿が映る。
(オーギュスト! 前の魔族と同じように転移能力を!)
ルミルスの大樹海で戦った七魔族が一柱……それと同じ能力をオーギュストは手に入れたのだとティオは察する。
その刹那、オーギュストの大剣が振り下ろされた――
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