第62話 さぁ、盛り上がってまいりました
「そういえば、少し前にアウシューラ帝国のとある大森林で、七魔族の一柱の手によって危機に陥った勇者パーティを、たった一人で救い出した冒険者の話を聞いたが……」
「まさか、ティオ殿のことだった……のですか?」
信じられない……といった面持ちで、ティオに問いかけてくるナツイロ公爵とダリア。
リリスとフェリスが喋ってしまっては仕方がない。
イライザ夫人の言うとおり、妖精族は嘘をつかない。
それは有名な話だ。もはや、とぼけることは不可能であろう。
それを理解したティオは――
「英雄かどうかはわかりませんが、七魔族の一柱を討伐したのは確かです……」
――渋々といった感じで、ナツイロ公爵たちの言葉を肯定する。
「ダリアとオーギュストさんを圧倒したという話を聞いて、只者ではないと思っていましたが、まさか七魔族の一柱を倒し、勇者パーティを救った英雄だったなんて、びっくりですわね……」
目を見開きながら、ティオを見つめるイライザ夫人。
ティオは困った様子で頭をかきながら、徐に口を開く。
「できれば、ぼくのことはあまり話を広めないでいただけると助かります。あまり目立ちたくないので……」
ティオたちは独自のやり方で救世の旅は続けるが、それとは関係ない……。
もっと言えば、しょうもない面倒ごとに巻き込まれるのは御免なのだ。
「ふむ……英雄と称えられる功績を残しながら、それを振りかざすことをしないのか」
「強いだけでなく、謙虚で素敵なお方なのですね、ティオ殿は……」
感心したような表情を浮かべ、ティオを見つめるナツイロ公爵。
同じくティオを見つめるダリアの瞳は少し潤んでおり、心なしか頬がピンク色に染まっているような……。
イライザ夫人も「勇者パーティを救った英雄がこのような可愛らしい男の子だったなんて……」などと言葉を漏らしている。
それはさておき。
「わかった、何か事情があるのだろう。貴殿がアウシューラ帝国の英雄であることは、ここだけの話にしておくと約束しよう」
「ありがとうございます、公爵様……」
ナツイロ公爵の言葉を聞き、ティオはほっとした表情を浮かべるのだった。
「ところで……ティオよ、よければ我が公爵家の婿養子にならないか? ついでに使用人のメイドにも種付けしてもらえると助かるのだが」
「……ッッ!?」
とんでもない言葉を口走り始めたナツイロ公爵に、ティオはギョッとした表情を浮かべる。
「お、お父様……!?」
自分の父であるナツイロ公爵の言葉に、ダリアが素っ頓狂な声を漏らす。
婿養子ということは自分がティオの花嫁になる……ということだ。
そんな反応も当然であろう。
しかし、ダリアは頬を真っ赤に染めながらも、潤んだ瞳でティオをチラチラと見ている。
(これは……!?)
(まさか……!!)
ダリアの乙女な反応に、アイリスとベルゼビュートが思わず殺気を漏らす。
これ以上競争相手を増やしてなるものか! といったところだろうか。
「(ねぇねぇ、今の話って……)」
「(私たちもおこぼれをもらえるってこと……?)」
「(英雄並みに強くて、おまけにあんなに可愛い男の子を食べていいの!?)」
後ろに控えていたメイドたちが、小声でそんなやり取りを交わしているが……ティオたちには丸聞こえである。
「ねぇねぇ、たねづけってなぁにぃ〜?」
「楽しいのです〜?」
初めて聞く単語に興味を持ったのか、リリスとフェリスがそんな質問を皆にぶつけてくる。
「え、えっとね……」
「リリス、フェリス、もっと大きくなったら教えてあげるわ……!」
幼い妖精二人にそんな知識を与えてなるものか!
そんな思いで、アイリスとベルゼビュートが勢いよくフォローを入れるのであった。
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