第3章 8 責任の所在は

午後3時―

 

 昼食後、スカーレットとカールは2人でカールの部屋でそれぞれ読書を楽しんでいた。カールが読んでいる本は少年が好みそうな冒険活劇物語だった。そしてスカーレットの本は恋愛小説だった。スカーレットはもう自身の恋愛も結婚も諦めていた。理由は分り切っていた。それは眠っている所を突然アンドレアに襲われ掛けたせいで男性恐怖症になってしまったからだ。しかし恋愛に興味を失ったわけではない。なので恋愛小説を読んで疑似恋愛を楽しんでいたのだった。


コンコン


その時ノックの音がした。スカーレットは立ち上がり、扉を開くとそこにはブリジットが立っていた。


「あら?ブリジット、一体どうしたの?」


「はい、実はアーベル様が私達に話したい事があると申されておりまして…」


「まあ…そうなの‥?でも…」


するとカールが2人の話を聞いていたのか。声を掛けてきた。


「スカーレット様。僕なら本を読んでいるので大丈夫です。どうぞ行ってらして下さい」


「カール様…」


カールはニコニコと笑顔でスカーレットに言う。」


「すみません、ありがとうございます。では行って参りますね?」


スカーレットは頭を下げると部屋を出るとブリジットに尋ねた。


「それで?アーベルはどこにいるのかしら?」


「はい、アーベル様は私の自室で待っていてもらっております。すぐに参りましょう」


「ええ、そうね。待たせてはいけないものね」


そして2人はブリジットの自室へ向かった。




ガチャリ


ブリジットがドアを開けると、部屋の中央に置かれたソファにアーベルが姿勢を正して座っていた。そして部屋に入って来た2人を見ると立ちあがった。


「スカーレット様…お忙しいのにお時間を作って頂き、ありがとうございます」


「いいえ、そんな事気にしないで。どうぞ、座って頂戴」


大分知り合いに対しては男性恐怖症が治まって来たスカーレットはアーベルの向かい側のソファに座った。その隣にブリジットも座る。そんな様子を見ていたアーベルは自身もソファに再び座ると言った。


「スカーレット様、大分このお屋敷に来て変わられたようですね。何というか…以前の様に戻って来られたように感じます」


アーベルは笑みを浮かべて言う。以前の以前の様に…それは男性恐怖症に陥る以前のスカーレットの事を言っているのが分った。


「ええ、私が少しずつ変われたのはカール様のお陰よ」


「カール様?」


アーベルが首を傾げるとブリジットが答えた。


「カール様と言う方はスカーレット様が家庭教師を去れているお子様のお名前です」


「ああ‥そうだったのですね?」


「でも、アーベル。元気そうで良かったわ…最後はあんな別れ方をしてしまったからずっと気になっていたのよ」


そして次の瞬間、スカーレットは表情を曇らせると言った。


「アーベル…本当にあの時はごめんなさい。私が無力で臆病だった為に…誰1人守ってあげる事が出来なかったわ。全て私のせいなのよ」


「何を仰るのですか?!スカーレット様は何一つ悪くはありません!」


「ええ、そうですよ!わるいのは全てあのマゼンダ母娘のせいです!それに私自身はスカーレット様に助けて頂きましたから!」


アーベルの言葉に続き、ブリジットが言った―。

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