第2章 6 寂しい少年
カールはスカーレットがすぐに返事をしてくれないので、顔を赤くして謝ってきた。
「あ・・ご、ごめんなさい。僕・・図々しい事をお願いしてしまって・・い、今の話は忘れて下さい!失礼しますっ!」
涙目になり、慌てて頭を下げて部屋へ戻ろうとするカールをスカーレットは驚いて呼び止めた。
「待って!カール様っ!違うの!そうじゃないのよっ!お願い!話を聞いて下さい!」
「・・・。」
カールは黙って振り替えると、スカーレットは彼の目線に合わせて腰を落とすと言った。
「聞いて下さい、カール様・・・。私はつい最近大人の男性の方に怖い目に合わされて・・それ以来大人の男性が怖くなってしまったんです。」
「スカーレット様・・!」
ブリジットは驚いた。まさかスカーレット自らが、たった10歳の少年に自分の身に降りかかった恐ろしい出来事を告白するとは思わなかったからだ。
「え・・・?もしかして・・酷い事されたんですか・・?」
カールは驚いたように目を見開くと尋ねてきた。
「ええ・・そうなの。だから・・男の人が怖くて・・・。」
「それじゃ・・・ひょっとして僕のことも怖くて・・食事したくないんですか・・?」
「いいえ、違うわ。カール様の事はちっとも怖くありません。もし怖ければ家庭教師なんて出来ませんから。」
スカーレットはカールの目を見て、はっきりと言った。
「そ、それじゃ・・・どうして・・?」
「それは、他にも誰か大人の男の人が食事の席に同席するのではないかと思ったからなの。」
するとカールは言った。
「それなら全然大丈夫ですっ!僕は・・いつも1人で食事を取っているので!だったら・・一緒に食事できますよね?!」
「「え・・?」」
カールは嬉しそうに言うが逆にその言葉にスカーレットとブリジットは驚いた。そしてスカーレットは尋ねた。
「一体、それはどいう事ですか?お父様やお母さま・・それに2人のお兄様たちがいらっしゃいますよね?一緒にお食事はとらないのですか?」
「あ、あの・・・お父様とお母様は・・ここにはいないんです・・。もうずっと前から避暑地で2人で暮らしています。代わりにアリオス兄さまが家の事を取り仕切ってるんですけど・・仕事が忙しいからって・・自分の部屋で食べてます。そしてハインリヒ兄様は・・僕の事嫌ってるんです・・・。母親が違うから・・お前は俺の弟じゃないと言って・・・。」
最後の方は涙目になっていた。それを目にしたスカーレットは胸がつぶれそうなくらい、悲しくなってしまった。
(私ったら・・・自分の感情ばかり優先させて、こんな・・まだ10歳の少年の心を傷つけてしまったんだわ・・!)
「ごめんなさいっ!カール様っ!」
スカーレットは強くカールの両手を握り締めると言った。
「カール様さえよければ・・これから毎日、朝も昼も、夜も・・一緒に食事をしましょう!」
それを聞いたカールは大きな目がこぼれる位に見開くと言った。
「ほ、本当に・・・?」
「ええ、本当です。」
「毎日ですか・・?」
「ええ、毎日です。」
「これからずっと・・?」
カールは涙目になって尋ねてくる。
「ええ・・・これからずっと・・です。」
「あ、ありがとう・・ございます・・。」
カールはポロポロと涙をこぼした。
「カール様・・!」
スカーレットはカールを強く抱き寄せた。
「大丈夫です・・・カール様。もう寂しい思いはさせませんから・・。」
優しく髪をなでてカールを抱きしめるスカーレットをブリジットとセオドアは静かに見守っていた―。
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