第百九十三話
「まぁ、なんであれ事件の犯人は分かったわけだし、何より開発の難航していたサヘラの再開発が一からできるようにもなった。悪いことばかりでもあるまい」
カップの紅茶を一息に飲み干してラングロッサは深く息を吐く。
「──────」
しばらく続く無言の中で冷静になって考えてみると結局のところ、私だってあの日起こったことをよく理解はしていないのだ。
まだ少しだけ温かいカップを置いてあの日の事を思い出してみる。
そう、あの時の爆発は私が死を覚悟するくらいの威力のものだった。だからもし仮に私が生きていたとしてもアレイスロアは地図から消えることになるのだろうと考えていた。
そう思っていたから私にはあの後の出来事は私の予想をはるかに超えていた。
目を覚ました私がまず見たのは真っ白い天井だった。うん、知らない天井だ。ってやつね。
まぁ、そこが見知った天井だった方が余程恐ろしいわけだけれど、ともかくその時の私が取れる行動と言えばまず周囲の現状確認するくらいしか出来ないわけである。
私もつくづくしぶといな、と思いつつ上体を起こしつつ窓から目にした光景に私は絶句した。だってそこに広がっていたのは普段と変わらないアレイスロアの街並みだったのだから。
サヘラで戦闘をしていた時、確かに私はそれまでの戦闘で体力も精神も消耗していた、だけどだからと言ってこれ程までに大きな勘違いをするほど意識が混濁していた訳でもない。だってあの威力なら……。
「……いや、いやいや」
何が起きているのか分からない私が一人混乱していると扉が鈍い音を立てて開いた。
そこには見知った少女と懐かしい友人にいた。一瞬、その光景に私だけではなく彼女たちもまた爆発に巻き込まれ死んでしまったのだと、私が死ぬまでの僅かな間に見ている幻想なのだと思った。だって本来ここに懐かしい友人はいないわけだからね。
でも、次の瞬間私の身体に激痛が走る。てか激痛なんて生易しいものなんかじゃない、身体がバラバラに弾け飛んだと錯覚するくらいの痛み、筋肉が、骨が、節々の関節が文字通り悲鳴をあげていた。
「ッ───!?」
そう、ほんとうに痛かった、それはもうめちゃくちゃ痛かった。動けば動くだけ痛いし何よりルーナの抱き締めが本当に痛かった。きっと彼女は無自覚なんだろうけれど、だからこそなのか彼女の普段からの仕返しを受けているようだった。
兎にも角にもこのままでは身体が持たない。そう直感した私はルーナを何とか身体から引き剥がしながら最初の疑問を投げかけた。
「どうして、まだアレイスロアが健在なの?」
何を言っているのだろうと疑問を浮かべて顔を見合わせるルーナとお嬢様。別におかしなことは言ってないはずだ、なのにそんな反応をされると私がおかしくなったみたいじゃん。
と言うか、何で私生きてるんだろう?
「だって、サリーナが体を張って守ってくれたから、当たり前でしょ?」
「は?」
「「え?」」
再び顔を見合わせる二人を端目に私は瞳を閉じてとりあえず寝ることにしたのだった。
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