第十二話 最後の戦い③
気が付くと、私は白い空間に居た。
周囲には何もない。全てが白の空間。
私は確かルートヴィヒと共にアルジュナと戦っていた筈。
そしてアルジュナを倒してアルジュナの身体から出てきた黒い光の塊が私の中に入ってきたのだ。
そして今私この白い空間に居る。
何処だと周囲を確認していると、前方に黒い靄が生まれる。
何だと見ていると、黒い靄は人の形になっていく。
「ふ〜ん、今回はちゃんと意識があるのね」
黒い靄は私そっくりな姿になって喋りかけてくる。
「もしかしてアルジュナなの?」
黒い私に話しかけると、なんとも気持ち悪い笑みを浮かべる。
「そうよ、またあなたの身体を奪いに来たの」
そっか、やはりアルジュナか。
「ここは何?」
アルジュナに質問するとアルジュナは笑いながら答えてくれる。
「ふふふっ、ここはあなたの精神世界よ」
「精神世界?」
「ふふふっ、あなたの心を具現化した世界よ。私はあなたの身体を奪う為にここへ来たの。だからここから出ていってくれないかしら?」
不気味に笑うアルジュナは私に近付き私の首を絞め始めた。
「ぐっ!? な、何のつもり!?」
「精神世界であなたが死ねばあなたの魂は行き場を失って消滅するの。前回は運良くあなたの魂の器になれる身体が別にあったからあなたは死ななかったけど、今回はそう上手くいかないわ」
ぐっ、苦しい!!
私はアルジュナの手を掴んで首を絞めるを止めさせる。
なんとかアルジュナの手を外した私は咳き込みながらもアルジュナを睨む。
するとアルジュナは目を丸くして私を見つめている。
「なっ!? 前回は簡単に精神世界を奪えたのに何故っ!?」
驚きながら再度私の首を絞めようとするアルジュナだけど、私は抵抗してアルジュナの両手を掴む。
「前回は簡単に奪えたかもしれないけど、今回は絶対に身体を奪わせるつもりはないわ!!」
私がそう強く思うと、身体が白く光り始めて力が溢れ出てくる。
「ば、馬鹿なっ!? 精神世界を掌握したですって!?」
精神世界を掌握した?
何の事かわからないけど力がどんどん溢れてくる。
白く光る私の手は、掴んでいるアルジュナの手を消滅させる。
「ぐああぁっ!? 私の手を消滅させたですって!? 何で精神世界を掌握出来たの!? 精神世界を完全に掌握するには強い想いがないと出来ない筈よ!?」
強い想い?
それならある。
私は前回身体を奪われた時にルートヴィヒの事を愛していると気付いた。
それから私はルートヴィヒに愛を伝える為にここまで来たのだ。
まだルートヴィヒに一人の男性として好きだと、愛していると伝えていない。
だから伝えるまでは死ねない。
いや、伝えて相思相愛になってラブラブ生活を過ごすまで死ねない。
この想いがおそらく私の力になっているのだろう。
「残念ね、アルジュナ。私には愛という強い想いがある。この想いは決して揺るがない。あなたの負けよ!!」
アルジュナに勝利宣言すると、身体を震わせ鬼の様な顔で私に襲いかかってくるアルジュナ。
「愛? 愛ですって!? ···そんな不確かなものに私が負ける!? ···ふざけるなぁぁあっ!!」
アルジュナの身体から黒き靄が溢れて私を飲み込もうとするけど、私はルートヴィヒが好きだと強く想う事で黒き靄を払いのけた。
「もうあなたの負けよアルジュナ!! これ以上私の身体に居座るな!! 出ていけっ!!」
私は白き光をアルジュナに向かって放つ。
「ぐぁぁぁあっ!? 私の魂が負ける!? そ、そんなの嫌よぉぉぉおっ!!」
アルジュナは魂を消滅させられるのを嫌がり私の精神世界から出ていった。
身体を奪われなかった。
あとはルートヴィヒがなんとかしてくれる。
そう信じながら私の意識は再びブラックアウトした。
◆◆◆
意識を失い倒れそうになったステラの身体を支えていると、ステラの身体が震えだしてステラの身体の中から黒き光の塊が出てきた。
おそらくアルジュナの魂だろう。
僕はステラの身体を地面に寝かせ、剣を構える。
『ぐっ、この身体は奪えなかったけど、外にはクローンが沢山いる。失敗作とはいえ私の血が流れているなら入る事ができる筈。とりあえずはそれで我慢して体勢を整えなければ』
アルジュナの魂から声が聞こえる。
そうか、外のクローンに潜り込むつもりか。
だがそうはさせない。
僕はレヴァンティンを自分の身体にエンチャントさせて光迅化して剣に魔力を溜める。
そんな僕を見て魂だけとなったアルジュナは笑う。
『ふふふっ。無駄よ、魂だけとなった私を斬れるものですか。今回は負けを認めてあげるけど、最後に勝つのは私よ!!』
魂だけとなったアルジュナは地上のクローンの元へと行こうとするが行かせるつもりはない。
「アルジュナ、君に次はない。この剣は斬れないものを斬る為に僕が生み出した秘剣。この時の為に生み出した剣だ。喰らうがいい」
僕は剣に限界まで魔力を溜めると、瞬歩で駆けて魂だけのアルジュナを斬る。
「光迅流七の型――閃煌!!」
『斬れないものを斬る? そんな剣があるわ···けな!?』
一瞬だけ抜剣して剣を鞘に納めるとアルジュナの魂は見事に真っ二つになる。
『!? ほ、本当に斬れてる!? ···う、嘘よ!? こ、こんな終わり方なんて嘘よ!? 消えたくない!! 消えたくないぃぃぃっ!!』
アルジュナの魂は絶叫しながら消えていく。
···勝った。
アルジュナを倒した事により、空飛ぶ城は崩れ始めた。
光迅化を解いてステラを抱き上げると、ステラが目を開く。
「···んっ、お兄ちゃん? アルジュナは?」
「大丈夫、倒したよ」
笑顔で告げるとステラは笑みを浮かべながら僕に抱きつく。
「そっかお兄ちゃんなら倒してくれるって信じてた。···あのね、ずっとお兄ちゃんに、いえ、ルートヴィヒに伝えたかった事があるの」
頬を赤らめるステラが何を伝えたいのかが分かる。
本当は城が崩れているのだから急いで脱出しないといけないのだろうが、僕も今聞きたかった。
「···それはね。···それはルートヴィヒの事を一人の男性として愛してるって事!!」
ステラは顔を真っ赤にさせながら俯いている。
そんなステラに僕は返事をする。
「うん、僕もステラを一人の女性として愛してる」
返事をすると同時に僕はステラにキスをした。
ステラは一瞬目を丸くしたが、すぐに受け入れ目を瞑ってくれた。
一生こうしていたかったけど、応援に駆けつけてくれたイルティミナ先生に見つかった事により幸せな時間は終わった。
「···城が崩れてるのにお前達は何をしているべさか。脱出するからさっさっと手を握るべさ」
イルティミナ先生は僕達に呆れた視線を向けながら僕達に手を差し出す。
イルティミナ先生に恥ずかしい所を見られてステラと共に顔を赤くさせながら気になっていた事を聞く。
「···あのゼロさんは?」
「ゼロならパラケルトが地上に連れて行ったのね。だから安心するといいべさ」
そっか、ゼロさんは無事か。
僕とステラは安心するとイルティミナ先生の手を掴み、城から飛んだ。
地上へと戻ると皆がまだクローン兵と戦っているので僕達もクローン兵と戦う事にした。
それから数十分でクローン兵を倒した僕らはお互いの無事を喜び一息ついた。
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