第三章 冒険者編
第一話 下準備
ダンジョンに潜るのは私、ルートヴィヒ、セシル。あとは六月までだけど、チェルシーとイルティミナも一緒に潜ってくれるみたい。
ダンジョンに潜る前に保存食や、回復薬、魔力回復薬などを買って、ルートヴィヒとセシルの分のアイテム袋も買う。
アイテム袋は高いけど、戦争で得た褒章金があるので問題はない。
イルティミナとチェルシーは自前で持っているみたい。
準備は整った。
「ステラ、気をつけてね」
「うん、ローナも救護院の仕事頑張って」
ローナと抱擁し、暫しの別れを惜しむ。
家を出て、まず向かうのは、冒険者ギルドだ。
数分程歩き冒険者ギルドに入ると、ギルド内がざわつく。
まぁ、私はシュライゼムの冒険者の間では有名だからな。悪い意味で。
冒険者達の声などお構いなしでギルドカウンターへと向かう。
「いらっしゃいませ、デストロイヤーさん。本日はどの様なご用件でしょうか?」
受付嬢さんに悪気はないようだが、その異名で呼ぶのは止めて欲しい。イルティミナとセシルが後ろで笑っている。後で覚えてなさいよ。
「今日からいろんなダンジョンに潜りたいと思っているのだけれど、ここから一番近くのダンジョンはどこかしら?」
「ダンジョンですか? 一番近くにあったシュライゼムの森のB級ダンジョンはデストロイヤーさんが破壊してしまいましたので、次に近くとなると、コロラド山脈付近にあるS級ダンジョンなんですが、S級ダンジョンにはSランク以上の冒険者がパーティーに居ないと入れませんよ?」
ダンジョンを壊したの根に持ってるのかなぁ。やけに破壊した事を強調された気がする。しかし、Sランク以上の冒険者かぁ。私はBランク冒険者だし、ルートヴィヒとセシルは最低ランクのFランク冒険者だ。
う〜ん、先にB級以下のダンジョンに向かうかと考えていると、イルティミナが無い胸を張り、むかつくドヤ顔を向けてくる。
「あんまり聞きたくないけど何?」
「ふっふっふっ、実はあたしはSSSランク冒険者だべさぁ!!」
腹立つドヤ顔をプラチナに輝く冒険者カードを掲げるイルティミナ。
SSSランク冒険者ぁ? 聴いたことない。訝しげにイルティミナとイルティミナの冒険者カードを見ていると、受付嬢さんが驚いた顔でイルティミナと冒険者カードを見比べる。
「イ、イルティミナ·ホルス様!? あの大賢者の!?」
口を大きく開けながらイルティミナを見つめる。
「そうだべさ、私が大賢者イルティミナ·ホルスだべさ!!」
数秒間、驚きの表情でイルティミナを見つめていた受付嬢さんだけど我に返ったのか、表情が笑顔に戻る。
「失礼しました。ギルドマスターをお呼びしますので少々お待ち下さい」
受付嬢さんは丁寧にお辞儀した後、二階へと上がっていく。
数分程待っていると、受付嬢さんが、ギルドマスターであるレドルフのおっちゃんを連れて戻って来た。
私の顔を見たレドルフのおっちゃんは一瞬嫌そうな顔をし、イルティミナに頭を下げる。
「お久しぶりです、大賢者殿。お元気そうでなによりです」
「お〜、レドルフの坊主。久しぶりべさね」
イルティミナとレドルフのおっちゃんは知り合いらしい。
笑顔でお互いの近況を語り合っている。
「···でS級ダンジョンに潜られるとの事ですが、この者達と一緒にという事ですか?」
達というよりかは私個人に嫌そうな顔を向ける。
「そうべさ、私はただの付き添いべさ」
私の顔を見て大きな溜息を吐くレドルフのおっちゃん。
「···わかりました。世界に七人しか居ない最高ランクであるSSSランク冒険者のイルティミナ殿が居るのだから大丈夫でしょう。···おい、デストロイヤー」
イルティミナに対しては丁寧な口調だったのに、私に喋りかけるとなったら乱暴な物言いになるレドルフのおっちゃん。
そいつはシュライゼムの森を消滅させた危険人物ですよ?
「何よ、レドルフのおっちゃん。その異名で呼ばないでくれる?」
「デストロイヤーはデストロイヤーだ。それよりデストロイヤー、S級ダンジョンに潜るのはいいが、前の様に壊してくれるなよ。ダンジョンは国の貴重な観光資源なんだからな」
レドルフのおっちゃんの言葉を聞いて、レドルフのおっちゃんの視線を避けるように目を背ける私。
ダンジョンコアを得るのが目的な以上、またダンジョンを壊す可能性は高い。
無言の私を見て焦るレドルフのおっちゃん。
「おいおい、本当に頼むぞ!! B級ダンジョンを壊されたのも痛いんだ」
私は無言で笑顔を作り、右手親指をサムズアップして冒険者ギルドをあとにする。
冒険者ギルドからレドルフのおっちゃんの必死な声が聞こえるが気にしない。
私の頭の中はS級ダンジョン攻略の事でいっぱいだから。
待ってろ、S級ダンジョン!! 絶対に踏破してダンジョンコアをゲットしてやる!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます