第八話 VS連合軍②
連合軍を退け、勝利した私達は拓けた場所に移動し、野営の準備を行っている。
私とイルティミナは怪我人の治療をする為に簡易的に建てられた救護室に籠もっていた。
夜になり、一通りの治療を終えた私は救護室を出て、水を飲みながら休んでいる。
建てられた沢山のテントを見ながら水を飲んでいると、セシル、ウリス先輩、アルゴ様、ケルヴィ様がやって来た。
皆、幼い身で戦争に参加した私を心配して顔を見に来てくれたみたいだ。
私は皆が無事だとわかり、少し泣いてしまった。
お互いの無事を喜び合って少し話した後、ウリス先輩やアルゴ様、ケルヴィ様は自分の陣営へと戻っていった。
私とセシルが談話していると光迅流の人達の無事を確かめに行っていたルートヴィヒが戻って来た。
三人で配給された夕食を食べていると、夕食の入った皿を片手に持ったクルトがやって来た。
「一緒に食べてもいいか?」
クルトの問いに頷く。
クルトは私の隣に座り夕食を口に入れる。
食べ終わるとクルトが私達に頭を下げる。
「ステラ、ルートヴィヒ。来てくれてありがとう。イルティミナ様やお前達が来てくれなかったら我が軍は危なかった」
「頭を上げてよクルト。友達を助けるのは当たり前でしょ」
「だが、本当はまだ幼いお前は戦う必要はないんだ。なのにお前は戦争に参加した。それは俺やセシル、他の知り合いの為に参加したのだろう? 俺はそれが心苦しい」
クルトは申し訳なさそうな顔をして俯いている。
「クルト、私は自分の意志で戦うと決めたの。それは誰かの為ではあっても、誰かのせいではないわ。だから気にしないで」
私の言葉にクルトはしばらく黙考した後、「ありがとう」と呟いた。
少し他愛もない話をして、クルトは本陣へと戻っていった。司令官であるクルトは忙しいみたい。
私とルートヴィヒとセシルはしばらく語り合った後、同じテントで一緒に寝た。
翌日。
ヨルバウム帝国東軍は連合軍を追撃する為にワナゼンダ国へと入国した。
出来るだけワナゼンダ国の民を刺激しない為に村や町などには入らないように進軍しているけど、通らなければ先に進めない街などには仕方なく入った。
街の中に入ると、ワナゼンダ国民の視線から不安そうな感情が汲み取れる。
民に罪はない。申し訳なく思うが、それでも私達は進む。連合軍を追って。
三日程進軍して連合軍を発見した。
連合軍はワナゼンダ国王都ナクルムに立て籠もっている。
王都ナクルムは高い防壁に囲まれており、籠城戦をするにはもってこいの場所だ。
王都の中には罪のない民衆達が居る。魔法で無差別に攻撃する訳にもいかない。
敵も中々考えたものだ。
敵には名軍師と呼ばれる者が居るらしい。恐らくそいつが考えた作戦だろう。賢いとは思うが、民を盾にする様なやり方は気に食わない。
この籠城をどうやって攻略するか司令官であるクルトや幕僚達は悩んでいるのだろう。
王都ナクルムから少し離れた場所で野営をする事になった。
日が暮れ始めた頃、私とルートヴィヒ、セシルが本陣に呼ばれた。
本陣へと向かうと、幕僚達の中にウリス先輩やアルゴ様、ケルヴィ様、イルティミナ、チェルシー、光迅流当主メルトさん、カイル、ゼルバの姿があった。
幕僚達に囲まれている司令官であるクルトが私達に視線を向ける。
「ステラ、ルートヴィヒ、セシル、よく来てくれた」
真剣な表情で私達を見つめるクルト。
「これからこの攻城戦攻略の為の作戦を説明する」
幕僚達の視線も私達に向けられる。
「まずはイルティミナ様には上空に飛んでもらい、東軍全体で王都ナクルムを囲み敵の注意を引く。その間に土魔法に長けた工作部隊で作った地下道から少数精鋭で王都ナクルムの中に潜入してもらう手筈になっている。その少数精鋭の部隊をメルト子爵に率いてもらう。ウリス侯爵、ステラ、ルートヴィヒ、セシル、チェルシーにはその潜入部隊へと参加してほしい。目的は門の解錠と、敵司令官とワナゼンダ国国王の捕縛だ。国王は無傷で捕らえてほしいが、敵司令官は抵抗するなら殺しても構わない」
淡々と説明するクルトだが、眉間に皺を寄せてる姿から私達に大役を担わせる申し訳なさが伝わってくる。
「この作戦は罪のない民に被害を与えたくない俺の我儘だ。その我儘でお前達を危険に飛び込ませる俺を恨んでくれても構わない。頼む、作戦を引き受けてくれ」
頭を下げるクルトに反対の声をあげる者は誰も居ない。
「クルト司令官。そのご命令謹んでお受けします」
メルトさんの了承の声に作戦に参加する私達は頷く。
民を傷つけたくないクルトの甘いが優しい考えが私は大好きだ。
だからこの作戦は絶対に成功させる!!
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