第九話 冒険者登録と戦闘準備
月日が経つのは早い。
僕は十二歳になり、ステラは七歳だ。
僕が十二歳という事はセシルも十二歳。
セシルと僕は来年から王都にある魔法学院に行く予定なので、試験を受けに来週王都へ向かう。
王都へは馬車で向かう。約二週間の旅だ。
街道にはときおりモンスターが出るので護衛の冒険者を雇う予定だ。だけど自分達でもモンスターを倒せるようになっておこうとセシルと話をして、これからモンスターを狩りに行こうとしているのだけど、ステラもついてこようとしている。
「ステラ、僕達が倒しに行くのは平原の弱いモンスターだ。でも何が起きるか分からないんだ。だからまだ七歳のステラは連れていけないよ」
「後方で魔法しか使わないから大丈夫! ね? 良いでしょ、お兄ちゃん?」
「こればかりは駄目だよステラ」
心を鬼にして譲らない。
僕が折れないとわかったのかステラはセシルにターゲットを変える。
「ねぇ、セシル。お願い!! 連れてって?」
セシルに抱きつき、上目遣いでセシルを見つめる。
「······別にいいんじゃないか、連れて行っても」
「セシル!!」
「そう怖い顔をするなよ、ルゥ。相手にするのはスライム、ホーンラビット、ゴブリンなんかの弱いモンスターだろ? それに危なくなったら俺達が助ければいい。そうだろ?」
セシルはこうと言い出したらなかなか譲らない。時間の無駄だし折れるしかない。
「···分かりました。だけど僕達の後方に絶対に居るんだよ?」
「うん!! ありがとう、お兄ちゃん、セシル!」
ハァ〜と溜息を吐く。このお転婆な妹には困ったものだ。
「じゃあ、先に冒険者ギルドに行こうか」
「え? どうして冒険者ギルドに行くの?」
「どうせモンスターを倒すなら冒険者登録して倒した方が色々と得だからな」
ステラの質問にセシルが答える。
「そういうことです。さぁ行きましょう」
冒険者ギルドに着いた。何回か見た事あるけど、改めて見ると中々立派な建物だ。
扉を開けると酒場が併設された冒険者ギルドなので中々広い。
酒場には昼間から酒を飲んでる冒険者がちらほら居る。
いっけん絡んできそうなガラの悪い冒険者に見えるけどあまり心配していない。
なぜならキプロの街は治安がいいので絡んでくるような人間はあまり居ないのだ。
それにそもそもこの街に住んでる人間は、僕達がフェブレン伯爵家の人間だと知っているので絡んでくるわけがない。
冒険者ギルドのカウンターに向かう。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。フェブレン家の方々がどのようなご用件でしょうか?」
カウンターいる受付嬢さんもやっぱり僕達がフェブレン家の人間だって知っているみたいだ。
「はい、冒険者登録をしに来たんですが」
「えっ? 3人ともですか?」
「はい、出来ますか?」
「冒険者登録に年齢制限はないので可能ですが、本当に三人登録してもよろしいんですか?」
ステラを見ながら尋ねてくる受付嬢さん。
「はい、大丈夫です! 三人登録でお願いします!」
ステラが元気良く受付嬢さんに伝える。
「分かりました。それではこちらに名前と年齢、得意な戦闘職業を記入して下さい」
「戦闘職業?」
セシルが首を傾げる。
「例えば、剣が使えるなら剣士、弓が使えるなら弓使い、魔法が使えるなら魔術士ですね」
「なら俺とルゥは魔法と剣が使えるから魔剣士ってことか。でステラは魔術士か」
記入用紙に名前と年齢、戦闘職業を書いて受付嬢に渡す。
「確かにお預かりしました。少々お待ち下さい」
カウンターにカードサイズの金属板を三枚取り出し、手を金属板に向け何かぶつぶつ言っている受付嬢さん。
すると金属板が光り、金属板三枚それぞれに文字が刻まれている。
「これで冒険者登録と冒険者カードの発行が終わりました。冒険者カードには名前とギルドランクが刻まれています。身分証明書としても使えるので無くさないで下さいね。再発行にはお金がかかるので」
「分かりました、ありがとうございます」
冒険者カードを受け取り見てみると、ルートヴィヒとFランクと書いてある。
「Fランク?」
「冒険者になったばかりの方は皆Fランクから始まります。ランクを上げたいならランクに合った依頼をこなしていき、規定のモンスター討伐数をこなせば上がります。ですが、Bランク以上のランクは適正試験があります」
「なるほど。ちなみにモンスターの素材って冒険者ギルドで買い取りしているんですよね?」
「はい、していますよ」
「分かりました。聞きたい事は聞けたのでそれでは失礼します」
「はい、いってらっしゃい。お気をつけて」
受付嬢に見送られ冒険者ギルドを出る。
「冒険者登録は出来たし、次は武器と防具ですね」
「ああ、お祖父様から軍資金はもらったから買いに行こう」
武器屋を見つけ入ると、強面のおじさんが無愛想に、「···いらっしゃい」と呟く。
壁には槍や盾、剣、弓などが立て掛けられている。
だが、立て掛けられている武器は高そうだ。
予算は金貨三枚。つまり一人一枚だ。
でも武器や防具の良し悪しは僕達には分からない。
なので店主に任せることにした。
「すみません、一人金貨一枚で武器と防具を見繕ってもらえませんか?」
「···戦闘職業は?」
「僕と彼は魔剣士です。この子は魔術士です」
「魔剣士なら本当は魔剣や魔法伝導率の良いミスリルの剣なんかがいいんだが、防具込みで金貨一枚じゃ予算オーバーだ。だから坊主達の武器と防具はとりあえずこのブロードソードと軽くて丈夫なアースリザードの革で作られた防具一式だ。嬢ちゃんには魔法の威力が上がるヤドリギの杖とシルクスパイダーの糸で編まれた火にも強いローブだ」
それぞれ用意してもらった装備を身に着ける。
「どうだ?」
「はい、防具は軽いし、このブロードソードは扱いやすいですね」
「ああ、確かにこの剣は使いやすいな」
セシルは剣を気に入ったみたいだ。
「このローブ、ちょっと大きくない?」
「すまねぇな。嬢ちゃんのサイズに一番近いのはそのローブしかなくてな」
「そっか。まぁ、着心地は悪くないし、身長も大きくなるだろうし、これでいっか」
「それじゃあこれらを買わせて頂きます」
店主に金貨三枚を渡す。
「毎度。···今からモンスターを倒しに行くんだろ? 気を付けろよ」
「はい、ありがとうございました」
武器屋を出る。強面だったけど優しい店主だったなぁ。
あとは道具屋で素材を入れるようのリュックと素材を剥がすナイフを買って準備は整った。
キプロの門に向かい、門番に冒険者カードを見せて通らせてもらう。
さぁ、街の外に出た事だし、モンスターを狩るとしようか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます