第43話 実戦
カンケルに首を落とされかけ、首が少し切れて血が数滴流れ落ちる修を見て、アイリスは考えていた。
…アリエス同様に近距離戦はこちらが不利になりそうですね。もっと距離を取らないと…。
しかし距離を取ろうとすると、即座に距離を詰められ、そんな事を繰り返して膠着状態に陥った。
「のんのん…離れて行かないでよアイリスちゃん…。」
そう言うカンケルに、修はまた怒りながらアイリスの指示を待った。
そしてアイリスが合図を送ると、修は小さく頷いた。
「何何?合図何か送っちゃって!アイリスちゃん俺にも合図送ってー!」
…やりにくいですね…。
アイリスはカンケルの言動に少しげんなりしながらも、もしもの時のために呼んでおいた、テルマが送った無人バイクに修と飛び乗った。
「え!?ちょっと待ってよアイリスちゃん!」
カンケルはそう言うと、電飾が無駄についたバイクで追いかけて来た。
しかしカンケルのバイクはスピードがあまり出ず、アイリス達は無事逃げる事が出来た。
「アイツ…また来たら俺が倒してもいい?アイリス…。」
アイリスはそれを聞いてバイクのミラーごしに修の顔を見ると、修は真剣な顔をしていた。
…あの相手はかなり危険ですが…オサの気持ちも尊重したいですね。
アイリスは一瞬だけ目を瞑り、悩んだすえに修の顔を見て頷いた。
***
「オサ!そんなんじゃとてもカンケルに勝てませんよ!」
「はい!」
アジトに帰った後、このまま戦わせていいのかアイリスはまた悩み、特別訓練を修に受けさせる事にした。
それがいつもよりかなりハードな訓練で、休憩になると、修は汗だくでひっくり返りはするものの、文句は一言も言わなかった。
「アイリス…。」
「…どうかなさいましたかオサ」
息を整えながらアイリスに話しかけると、修は天井を見ながら言った。
「俺は必ずカンケルに勝つ…だから心配すんな」
「…。」
アイリスは修の気持ちが少しわかる気がした。
アイリス自身もジョージに心配をかけて来たと思っているからだ。
女であり、まだ子供でもある自分を、ジョージは訓練を受けさせる事で信頼し、背中をあずけてくれていた。
自分も修を信じてやりたい気持ちだったが、不安の方が大きかった。
…カンケルは頭は良くはなさそうですが、あの身のこなし、かなり出来ると思われる。オサはまだ病み上がり…本当に大丈夫でしょうか…。
その不安がやはり修にも伝わっていたのだろう。
修は立ち上がると、アイリスに言った。
「俺は大丈夫だって!絶対にアイリスを守ってみせる!」
…守るのは私の仕事なのですけどね。
そう思いながらアイリスが吹き出すと、修は不服な顔をして言った。
「俺、真剣なんですけど!アイリス!」
頬を膨らませる修に、アイリスはツボに入ったのか、笑い続けた。
「…ごめんなさい…面白くってつい…。」
「いいよ全然。不安そうな顔されるより今の方が俺はホッとする」
アイリスが笑い終え修と見つめ合うと、修はアイリスの顔に少しづつ顔を近づけて来たが、アイリスはキスしそうになると、スッと立ち上がり言った。
「さぁ、訓練の続きをしますよオサ」
…あとちょっとだったのに!
修は思い出したように言ったアイリスの言葉に、ずっこけながらそう思った。
そんな修をチラッと見ながら、アイリスは少し嬉しそうに笑った。
***
カンケルが再び姿を見せたのは、その次の週だった。
またアジトまで走って帰る途中だったので、アイリスと修は全く驚かなかった。
「会いたかったよアイリスちゃん!」
カンケルが電飾だらけのバイクから降りてウインクしながらそう言うと、修はカンケルの前に立ち塞がり言った。
「アイリスに近づくな!お前の相手は俺だ!」
修の顔を見ると、カンケルはたちまち不機嫌になり舌打ちした。
「たく…いいとこのお坊ちゃんがよ。親に恵まれてその上、女まで望むのは欲張りってもんだぜ。アイリスちゃんは俺に任せて、とりあえず死んどけや!」
いきなりカンケルはハサミを持ち飛び掛かって来が、修はそのハサミを白刃取り、攻撃を防いだ。
「なっ!?何お前手で挟んでるんだ!離せよおい!」
「やだね、離すもんか!」
二人共、力任せに相手を負かそうとし、力比べのような状況が続いた。
しかしカンケルが、大きなハサミを手放し、小さなハサミを取り出したので、修は大きなハサミを横にしてカンケルの脇腹を殴った。
「!?痛ぇ!」
カンケルはその場にうずくまりながら、修を見上げた。
「この前と別人みたいじゃんよ…何かあったかおい?」
そう笑うカンケルに、修は巨大なハサミを向け、言った。
「俺にはいい師匠がついてるからな…。お前いつもこんなハサミだけで殺しやってたのか?」
修の問いに、カンケルは笑いながら答えた。
「まぁな!俺はこだわる男だから!」
「…何がこだわりだ!ふざけんな!」
修がそう言ってカンケルの胸ぐらを掴んだ。
「お前のふざけたこだわりで殺された人達の事を考えた事はあるか!?…お前はインターポールの人達にあずける。そこで根性叩き直してもらうんだな!」
修がそう言うと、カンケルは萎縮してしまっていた。
黙って見守っていたアイリスには、少し修が頼もしくなったように見えていた。
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