第22話 和顔施(わがんせ)

 遅刻しそうだっていうのに

 道路は渋滞。


 焦る私に

 道を譲る余裕はない。


 車間を詰めて

 わき道から入ろうとする車をシャットアウト!


 すると、数台前の車が

 前方で道を譲ってるのが見えた。

 

 見覚えのあるその車。

 よく、ギリギリで仕事に来るバイト君。


 多分彼は、最高の笑顔で

 道を譲っているのだろう。


 そして、譲られたあの人は

 きっと最高の笑顔を返しているだろう。


 いつも職場で見る彼の笑顔は

 仕事用の作り笑顔なんかじゃなかったんだね。


 彼の笑顔を想像して

 私の肩から力が抜けた。


 そうだ、私も彼のように

 笑顔で過ごすことにしよう。



 

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