Mrs絶好調とジゴワット博士

水原麻以

続、続々∞続タイムマシン ブースト・フューチャー

よせばいいのにジゴワット博士がキノコ雲を立てた。これでセイウチ島は完全に陸の孤島から絶海へ格下げされた。

「後者の方がロマンがあるじゃないか」、だって。冗談じゃない。あいつのせいで交通手段が船だけになった。それにもともとセイウチは海のない町だったんだ。それがジゴワットのおかげで漁業の盛んな街になっちまった。これでもちょっと昔は坂の多い人情溢れる街だったんだ。石清水が美味しくて造り酒屋が軒を連ねてた。

ところが、ドッカンだ。街興しだかふるさと創生だかの交付金で奥セイウチの放置林に研究所を誘致することになった。そら、町中が沸いたよ。お祭り騒ぎだ。偉い学者先生がスタッフや学生をずらりと引き連れてやってくるんだもんなあ。世界中から人が来てドッカンドッカン、金を落としてくれる。

みんな、夢と希望を膨らませたものさ。

ところが、蓋を開けてみればびっくりだ。

来たのはマッドサイエンティストと逝かれた女だ。たった二人だけ。研究所というのもわけのわからない空飛ぶ鉄屑で、それが奥セイウチ渓谷に陰を作った。それだけじゃない。ドッカンドッカンとはた迷惑な実験を繰り返して地形まで変えちまった。

もちろん反対運動はしたさ。だが町長は交付金をちゃっかり横領して研究所に対する借金だけが残った。屋外実験場使用料の名目で架空計上してやがったのさ。博士から金は奪うわ、リターンする筈の交付金は着服するわ、踏んだり蹴ったりだ。町長は襲撃されて署長ごと死んだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る