第9話「出立つ、サムライ」

―― 戦場いくさばではないのですから ――


私を愛して下さるあなたは、

私が家に帰る頃まで待っていてくれます

澄んだ満月、並んでとなりにいる姿、

理性も揺らいでしまうくらい、

あなたは美しいのです


ですが、先ほど

主君であるおやかた様から、

命が下されました

私は明朝に、

ここを立たねばなりません


あなたには心配をお掛けしますが、

どうか私が留守の間も、

安らかであられるよう案じております


―― 戦場いくさばではないのですから ――


そう言って下さるあなたの言葉は、

月影にあたる私たちの、

平穏無事を映しているのでしょう


愛を語る資格のない私は、

いとおしい気持ちで、

幸せを噛みしめております


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