補完編その2 エピローグに至るまでの(改心して侍女になるまでの)お話 俯瞰視点(1)
「ぎやあぁああああああああああああああああああああああああああああああ――ぁ……。ぇ……? ここは……。わたくしの、へや……?」
悪夢内で気絶した、その直後のこと。ベッドで眠っていたマリィは飛び起き、呆然と室内を見回しました。
「わたくしが、居るのは……………………わたくしの…………へや、ですわね……。じゃ、じゃ……。さっきのは、ゆめ……?」
その呟きは半信半疑でしたが、悲鳴を聞きつけた――偶々廊下を通っていた父親がノックの後に入ってきたため、確信。全てが悪夢だったと分かり、大きく安堵の息をつきます。
けれど。
ホッとできたのは、極僅かの間。すぐに、あの恐怖が蘇ってきます。
「…………今のは、夢、だったけど……。怖かった……っ。怖かったですわ……っ」
夢の中での出来事はやけに鮮明に覚えていて、おぞましいテオの姿と引っ張られた感覚などがしっかりと残っていました。そのためマリィは震えながら身体を抱いて、だから、なのでしょう。
「また出たっ!? テオ様が出たぁぁぁああああああああああああああああああ!!」
「ぎぃぁあああああああああああああああああああああああああ!!」
「ぁぎひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
その日からマリィの夢は、いつも同じ。禍々しいテオが現れ追いかけられる、という悪夢を見るようになってしまいました。
「……だ、駄目……。こんな毎日を過ごしていたら……心も体も、壊れてしまいますわ……。いったい、どうすれば……。この悪夢は消えますの……?」
すっかり衰弱したマリィは必死に考え、やがて一つの答えへとたどり着きます。熟考の末に見つけたものは、罪を反省し悪事と縁を切る――ジュリエットとテオに、謝罪をすることでした。
「『もっと悪巧みをしろ』と言われるのだから、きっとそういうものを切り離せば消えるはず……っ。で、でも……」
罪を打ち明けてしまうと、大変な事になってしまう。2人は激しく怒り、最悪ミラ家を追放されてしまうかもしれない。
「それに……」
作戦を計画したのは、『自分に見えないところで何かをやっていたから』――ジュリエットに非があるから。確かに本心を隠して企むのは悪かったけど、原因はあっちにある。
なのに、自分だけ何もかもを失うのは不公平だ。
マリィは逆恨みによって自身に都合の良い解釈をしているため、その案は却下。
「心の中で反省していれば、きっと大丈夫。原因はあっちにあるんですもの。こういった方法でも、悪夢は消えてくれるはずですわ」
そしてこのように言い聞かせ、自らの罪は伏せておくようにしました。
しかしながら――。そんな行為は『反省している』とは到底言えず、
「ぎぃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「ぎびぇええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
それからも悪夢は毎日発生し、5日後の事でした。更にボロボロになってしまったマリィにはもう、そういった事を気にする余裕はなくなっていて――。罪の告白をするべく、2人のもとを訪ねたのでした。
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