第6話 気を取り直して、作戦の準備をスタート! マリィ視点(1)

「………………ふう、では。作戦その3について、考えていきましょうか」


 あれから、約1時間後。仮眠によってどうにか調子を取り戻し、わたくしはクローゼットの奥に隠していたウィッグや服など――『ジュリエット・ミラ変装セット』を取り出した。


 ――作戦その3――。

 その内容は、『お姉様に成りすまして悪事を働き、そこを目撃および撮影されてしまい婚約破棄される』というもの。


 作戦その3の駒――ジュリエットの人気に嫉妬している人間同級生の伯爵家令嬢・ナディアに、『ジュリエットはキャラを作っていた。実はストレス解消に夜中家を抜け出し、陰で悪さをしていた』と密告。公園でよく草花を踏み荒らしていると教えてカメラ持参でおびき寄せ、そこで変装したわたくしが悪事を働く。

 こういう筋書きに、なっていますの。


、わたくし達は双子。共通点が多く、寄せようとすれば再現できる」


 本物の毛髪で作ったウィッグをかぶり、髪の長さを調節。全体的に5センチほど長くしてお姉様と全く同じ化粧を施し、お姉様が愛用している服と同じものを着る。

 そうして鏡を覗けば、そこに居るのはジュリエット・ミラ。

 自分でも見分けがつかないくらい、お姉様にそっくりなわたくしが映った。


「あとは声を少しだけ高くして、雰囲気を柔らかくすれば……………………はい、完成。中も外も本物な、ジュリエット・ミラの出来上がりですわ」


「ごきげんよう」とニコッと微笑み、カーテ・シーを行ってみる。

 笑顔も仕草も、完璧。死に物狂いになって研究した甲斐あって、違和感の一つもありませんわ。


「明日学舎でナディアに情報を吹き込み、明後日の夜に決行。これでいきましょう」


 夜中に窓からコッソリ抜け出して、公園で草花を踏み荒らす。そこを激写されて、ミッション・コンプリート、ですわ……っ。


「証拠があれば、お父様とお母様も信じざるを得ない。もちろん、テオ様も信じざるを得ない。どんなに愛があっても、確証を目の当たりにすれば――」



「テオ様。今日は楽しかったです……っ」

「俺もだよ。また明日」



 丁度テオ様が帰るようで、窓の外から声が聞こえてきた。

 ……そして……。恐らくは、その影響なのでしょう……。不意に、


『失礼。その脅迫状を、近くで見せてもらえるかな』


 あの日の出来事が――。あの日の、恐るべき出来事が――。

 作戦その1が失敗した日の出来事が、蘇ってきてしまったのでした。

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