第149話 君には、秘密(恋人同士。性別自由)

「早く春にならないかなぁ」

 君が、僕の腕の中で震えながら言う。

 僕らは厚手のブランケットに包まり、あつあつの珈琲を飲んでいる。暖房も、ごうごうと音を立て強気に動いている。

 寒さなんて、ほとんど感じないはずなのに、君は唇を尖らして言うのだ。

「早く春になればいいのに」

 僕は、笑いをこらえながら、

「そうだねぇ」

 とまったく思ってないことを言う。

 春なんて、来なくていいのだ。

 こうして君を捕まえていられるのなら。

「早く来るといいのにね」

 常冬でもいいと、思っている。

 君には、一生秘密だけれど。


 END.

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