第146話 かにぱんが私の恋の味、なんて(片想い百合。女子高生)


 昼休み。お気に入りのかに型パンをもふもふ食べていたら。

「あ、それちょーだい!」

「ちょっ」

 後ろから伸びて来た手に奪い取られた。

 ふり返れば、パンは彼女の口の中。

 美人なのに、大口開けちゃって。

 でも、そんな豪快な健やかさが、より彼女を輝かせるって私は知っている。

「……食いさしやなくても、もう一個あるのに」

 袋の中のパンを指しながら言えば、

「んー? これが良かってんもん」

 彼女が、にししと悪戯っ子の顔で笑う。

「~~~~~」

 これ。私の食いさしが、良かった。

 間接キス、なんて、意識しているのは私だけだってわかっているけど。

「小悪魔」

 もう別の誰かのもとに、彼女はふらふら遊びに行っている。

 その後ろ姿を見ながら、私は小声で悪態をついた。


 END.

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