第82話 夜のティースタンド・スイーツ(社会人百合。同棲中)
休み前の金曜日。夜十時過ぎ。
莉奈と美那の家では、お楽しみがある。
彼女たちのテーブル……テレビ前を陣取る楕円のローテーブルが、甘く彩られる。
三段のアフターヌーンティースタンド。汗をかいた大きな硝子ポット。色とりどりのジャムの瓶。
スタンドには、下からサンドウィッチ、スコーン、クッキー、ロールケーキ、マカロンが載せられていた。
「用意出来た?」
「出来た!」
「それじゃ」
「ま」
「「始めますか!!」」
お風呂も入って、お気に入りの寝巻に着替えた二人が、いそいそと座る。
アイスティーをなみなみ注いだグラスを手にして、
「まずは……カンパーイ!!」
「かんぱーい!」
乾杯。
チンッとグラスがぶつかる軽い音。
深夜のお茶会が、始まった。
「んー……んまっ。このアイスティーうま!」
「ふっふっふ。アイスティーにすると美味しいって評判の茶葉をちゃーんと手順通りに入れたからね~」
美那が自慢げに胸を張る。莉奈が、ぱちぱちと拍手した。
「にしても」
「うん」
「相変わらず、コンビニスイーツやスーパースイーツでも様になるもんだね」
「ねー」
サンドウィッチは、近所のスーパー手作りの美味しいハムサンドとたまごサンド、スコーンやクッキー、ロールケーキなどもすべて某コンビニブランドの商品だ。
それでも、袋から出して、ティースタンドに飾ればなかなか様になる。
二人がこのことに気が付いたのは数ヶ月前。そこから時おり、休み前に優雅な時間を過ごすべく、ティースタンドを引っ張り出してのお茶会を催していた。
「明日っから連休だ!!」
「さぁて、何をしよっかねー」
「そうだなぁ」
莉奈が、スコーンにりんごジャムを塗りながら首を傾げる。
「……ちょっと、贅沢してみる?」
「贅沢?」
美那は、ゆずジャムをスコーンに付けている。
「この深夜のお茶会……ランクアップしてみる、とか」
「ま、まさか!!」
「ケーキ屋さんの本格スイーツ……一種類か二種類、混ぜてみない?」
「天才か……?」
ごくり。美那の咽喉が動いた。
「ね、ねえねえ、こないだテレビで和菓子のアフターヌーンティーってのやってたんだけど……」
「き、近所の庄田屋さんのおはぎとか……じょ、上生菓子、とか?」
「「ふ、ふおぉぉぉおぉぉぉ……」」
二人の雄たけび(小声)が部屋に響く。
「滾ってきましたな」
「滾ってきましたね」
ガッシ、と固く手と手を握り合う。
「思い切り贅沢」
「しちゃいますかー!」
そもそも、この週末のプチ贅沢だって普段がんばっている自分たちへのご褒美だ。
ならば大型連休には、さらにご褒美の大型アップデートをしたって構わないではないか。
二人は決意も新たに、グラスを取り合い、
「「かんぱーい!!」」
またぶつけ合った。
チンっと軽やかな音が、彼女たちの倖せな連休を祝福していた。
END.
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