第21話 恋する貴女は気が付かない(百合。片想い。先輩後輩)


「お腹痛い……」

「食べ過ぎですよ、先輩」

「だって、木戸先輩が作ったものだよぉ? そーりゃ食べるよ」

「本当に木戸先輩が大好きですね」

「……好き。大好き」

「それ、言わないんですか」

「告白ってこと? 言うわけないよ。だって」

 そう言って、あなたは。

「見ているだけで、倖せだもの。話せるだけで、倖せだもの」

 心の底から、倖せそうに微笑んだ。

 頬を染めて、目を眩しげに細めて。

 ああ、何て綺麗な笑顔なんだろうと思った。

 届かない、もの。

「……さようですか」

「あー、小雪ちゃん、呆れてるでしょう」

「呆れてなんか、いませんよ」

 ただ、羨ましいだけです。

 そんなことも言えない私は、ただの臆病者だ。

 見てるだけ、話せるだけでいいだなんて、私は思えない。

 思えないくせに、だからと言って、本当のことは少しも言えないのだ。

「とにかく、この薬飲んで下さい。少しはマシになりますから」

「ありがと、小雪ちゃん。頼りになるね」

「……どうも」


 END.




※先輩の卒業を絶望に想う少女の話、の主人公を後輩視点から見たお話でした。

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